ITS・テレマティクスの歴史(前編)〜クルマのデータ活用の幕開け〜

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こんにちは。Cariot(キャリオット)ブログ編集部です。

本日より、ITS(高度道路交通システム)やテレマティクスの分野に20年以上取り組まれてきた三菱総合研究所 主席研究員の目黒 浩一郎氏が「専門家ライター」として執筆してくださることになりました。今回は「ITS・テレマティクスの歴史」についてです。

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いまでこそ安価で手軽にIoTのサービスが利用できますが、歴史をたどると、インターネットも携帯電話もない時代から様々な工夫がなされてきたことがわかります。

■ITS(高度道路交通システム)の黎明期
1960年代、経済活動が活発化し、モータリゼーションが急速に進むなか、国土が狭く人口が過密な日本では、ハードの整備だけで増えつづける自動車交通を吸収するには限界がありました。そのため、ITを駆使して道路交通の流れを把握し、交通需要を最適配分することにより、限られた道路ネットワークを有効活用しようという発想が当初からありました。1966年には銀座で初の広域信号制御、1969年には首都高の交通管制が実験システムとして運用開始されました。

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そして1973年から1978年に開発・実験された自動車総合管制システム(CACS:Comprehensive Automobile Traffic Control System)では、自動車と路側インフラが通信を行い、自動車の目的地と交通状態をふまえて最適な経路を計算してドライバーに情報提供するという壮大な実験が行われました。

■国家的プロジェクトとしてのITSの推進
それ以来、各省庁が個別に道路交通施策に取り組んできましたが、1990年前半、ITS(Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム)という言葉が生まれました。1996年にITS関係5省庁が「ITS全体構想」を策定し、長期ビジョンが示されました。
この構想に基づいて実展開された代表的なシステムが、VICS(Vehicle Information and Communication System:道路交通情報通信システム、1996年開始)とETC(Electronic Toll Collection System:ノンストップ自動料金支払いシステム、2001年開始)です。

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日本が全世界に先駆けて国主導・インフラ主導でITSを推進した結果、クルマとインフラが通信を行うことにより、道路交通情報を提供したり、高速道路の料金支払いをすることができるようになりました。
なお、クルマの位置を把握するために欠かせないGPSがカーナビ用に普及し始めたのもこの頃です。渋滞情報を表示してくれるVICSはカーナビのキラーコンテンツとなり、日本ではカーナビがヒット商品となりました。

■車両データ活用への注目
国主導でITSの様々なサービスが実現していくなか、クルマのIT化も急速に進んでいきました。クルマには120以上ものセンサーがついていると言われています。それらのセンサーが常時クルマの状態を把握し、スリップ等の危険を事前に察知して、瞬時に運転制御を行うことにより、急な運転操作や悪い路面状態でも安全に走行できるように電子制御が行われています。
こうしたクルマのセンサーが収集するデータを集約して新たな情報を生み出すことに着目されはじめたのが1999年頃で、プローブカーという言葉も生まれました。GPSの精度が高まり、クルマが携帯電話や通信機器を介してインターネット接続できる環境も整いはじめた頃です。
例えば、位置情報を活用した渋滞情報の把握、加減速情報を活用した安全運転やエコ運転の診断、ワイパーの作動のための天候のきめ細かなモニタリングが試みられました。

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国土交通省では、クルマに搭載したGPS携帯電話等を用いて全国の渋滞状況を把握し、曜日別時間帯別に分析することにより効果的な渋滞対策を行うという試みも行われました。
現在広く普及しているITS・テレマティクスサービスの多くがこの頃に発案されたものと言えます。当時、IoTやビッグデータという言葉は存在していませんでしたが、着想としてはまさに現在語られているIoT、ビッグデータそのものです。
しかし、当時はまだ機器が高価で、通信環境や通信コストの面でも十分とはいえない状況でしたので、ビジネスモデルが描けないという状況が続きました。トラック等の運行管理システムなども普及し始めましたが、大変高価なシステムでした。
これらの課題が解決され、安価で便利な様々なサービスが実現するのが、2000年代後半から2010年代にかけてです。次回、引き続き車両データ活用サービスの普及についてお話します。

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