改善基準告示が見直しへ〜実態調査から見るドライバーの労働実態とは〜
管理業務のデジタル化で実現する効率的な労務管理とドライバーの労働環境の改善
「働き方改革関連法」による2024年度からドライバーの時間外労働の上限規制をはじめ、ドライバーの長時間労働改善への取り組みは急務となっています。
動態管理システムを活用した労務管理と業務効率化のポイントを解説します。
こんにちは。Cariot(キャリオット)ブログ編集部です。
過去のCariotブログでたびたびお伝えしている「改善基準告示」は現在、厚生労働省の「第3回労働条件分科会自動車運転者労働時間等専門委員会」において、2022年内の告示(2024年4月施行)に向けた議論が本格化しています。
今回は、改善基準告示見直しの論点と労務管理に役立つCariotの機能、実際の導入事例をお伝えします。
1.改善基準告示が見直へ
1-1.「改善基準告示」とは
「改善基準告示」とは、自動車運転者の労働時間等の労働条件の向上を図るため、トラック、タクシー、バス、それぞれの運転手の拘束時間や休憩時間などの基準を定めた「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」です。
現在適用されている「改善基準告示」は、トラックドライバーの拘束時間は原則月293時間、1日の拘束時間は13時間以内を基本としており、これを延長する場合であっても16時間までが限度です。また、1日の休息時間は継続して8時間以上と定められています。
1-2.改善基準告示を見直す理由
厚生労働省の改善基準告示の見直しは、参議院厚生労働委員会附帯決議において、過労死防止の観点から見直しを行うなど必要な施策を検討するよう求められていました。
厚生労働省の資料によると、道路貨物運送業は労災請求や支給決定件数ともに最多であり、労災請求が認定される割合も高いことがわかります。
画像:厚生労働省「参考資料1 改善基準告示の見直しについて(参考資料)」
- ドライバーの長時間労働に頼る物流業界の構造的な問題
- 荷待ち時間の長さ
- 手荷役・検品など付帯作業の多さ
- 非効率な業務による労働生産性の低下
など
ドライバーは長時間労働であるといわれています。この状況を是正するため、働き方改革関連法に従い、2024年度からドライバーの時間外労働の上限が年960時間までに規制されます。また、将来的には一般則と同様の年360時間を原則とし、臨時的・特別な事情がある場合は年720時間とするための議論は今後も続けられる予定となっています。
以上のことから、物流企業や運送事業者の双方おいて、今後もさらなる労働時間短縮の実現に向けた企業努力が求められています。
しかし、労働時間の短縮は運送事業者だけの努力では限界があります。荷主側企業も課題を認識し、無理な運行依頼をしない・荷役作業の軽減、待機時間の削減などの対策を講じなければなりません。
2.トラック実態調査結果の概要
2-1.実態調査で見るドライバーの労働実態
「改善基準告示」の見直しに先立ち、2021年10月に実施されたトラックの実態調査(1,410事業場、8,460名を対象)では、全体の傾向として拘束時間は減少しているものの、発荷主別の調査では増加傾向が見られます。
ここではいくつかのデータをご紹介します。
◆1年の拘束時間:全体の傾向
3,300時間以上と回答した事業者は、2020年の前回調査と比較して7.6%減少しました。
画像:厚生労働省「自動車運転者の労働時間等に係る実態調査結果(概要版)」
◆1年の拘束時間:発荷主別
3,300時間以上の割合は、元請の運送事業者で29.9%(+0.5%)、飲料・食料品(製造業)で28.8%(+9.0%)となりました。
また、3,516時間超の割合は、元請の運送事業者で11.7%(+9.3%)、紙・パルプ(製造業)で2.0%(+0.5%)、飲料・食料品(製造業)で6.0%(+4.0%)となりました。
画像:厚生労働省「自動車運転者の労働時間等に係る実態調査結果(概要版)」
◆1カ月の拘束時間:全体
繁忙期の1カ月の拘束時間について、275時間以上と回答した事業者の割合は、2021年度調査に比べ9.9%減少しています。
画像:厚生労働省「自動車運転者の労働時間等に係る実態調査結果(概要版)」
◆1カ月の拘束時間:発荷主別
発荷主別では、275時間以上の割合は、飲料・食料品(製造業)で46.6%となり、11.4%増加しています。しかしそのうち、293時間超〜320時間以下は減少しています。
画像:厚生労働省「自動車運転者の労働時間等に係る実態調査結果(概要版)」
※調査結果の詳細は、国土交通省「自動車運転者の労働時間等に係る実態調査結果(概要)」をご覧ください。
2-2.トラック作業部会で出された労使の主な意見
前項でお伝えした「トラック実態調査」の結果を踏まえ、国土交通省の「第3回労働政策審議会労働条件分科会自動車運転者労働時間等専門委員会トラック作業部会資料」では、委員からさまざまな意見が出されました。
- 使用者側:1カ月の拘束時間は293時間を維持
- 労働者側:1カ月の拘束時間は275時間
- 使用者側:休息期間は荷物の種類や業務形態で異なる基準を設けることができないのであれば、現行どおり8時間
- 労働者側:休息時間は11時間を中心に運行実態を踏まえて検討を行うべき。1日の拘束時間、休息期間は業態別に運行実態等を踏まえた見直しとしてほしい
- 使用者側:業務簡素化の観点から、拘束時間・休息時間の管理があるのであれば運転時間管理は不要
- 労働者側:現行どおりが妥当
- 使用者側:4時間から5時間に延長し「運転中断」は10分から5分に短縮するなど、荷種や道路の混雑状況を柔軟に対応できるよう見直し
- 労働者側:現行通りが妥当。ただし、SAなどが満車で駐車できない場合、例外的な取り扱いには検討の余地がある。事業者によっては労働基準法上の休憩を取らせず、改善基準告示の「運転の中断」だけを遵守させている場合もある。労働基準法上の休憩の考えも併せて示すべき
- 使用者側:分割休憩特例は継続2時間に短縮。2人乗務は車内ベッドでの睡眠時間を休憩時間として取り扱ってほしい。休日労働は現行どおりが妥当
- 労働者側:分割休憩特例はバスと同様に見直すべき。その他、事故、天候に加え荷主都合による取り扱いを認めてほしい。
荷主の違反行為のうち48.6%が長時間の荷待ちであり、荷主における改善基準告示の認知も低い。特に、着荷主については厚生労働省にも指導をしてもらいたい。荷主による遅延も例外的取り扱いの対象とすると規制が骨抜きになる
※委員発言の詳細は、国土交通省の「第3回労働政策審議会労働条件分科会自動車運転者労働時間等専門委員会トラック作業部会資料」にてご確認ください。
3.労働環境を見直すためのお役立ち資料とCariotの機能
ドライバーの長時間労働を解決するためには、どの作業に・どの程度の時間がかかっているか、休憩時間が取れているかなど、現場の状況をリアルタイムデータとして正確に把握し、適切な労務管理を行わなければなりません。このとき取得したデータは、運送事業者と荷主側企業が交渉する際にも役立ちます。
モビリティ業務最適化クラウドCariotは、現場の状況を正確に把握し、ドライバーの労働環境改善や労務管理業務効率化をサポートする機能をご用意しています。
◆労務管理に役立つCariotの機能
・走行データ機能
走行中の車両の走行履歴を自動で記録できる機能です。いつ・どこを・どのような速度で走行し、どこで・どの程度の時間滞在したかを振り返って確認することができます。ムダを省き、適切な走行ルートの作成や業務効率化にお役立てください。
・業務ステータス機能(Cariotモバイルアプリ限定)
ドライバー側から、業務中の休憩や実車・空車・待機等のステータスを記録できる機能です。管理者は、業務をリアルタイムに把握できます。
また、稼働実績はレポートとして出力できます。実車率や待機時間等を計測し、業務効率化に活用することができます。
4.Cariotで労働環境改善を実現した導入事例
Cariotを導入して業務効率化を行ったり、ドライバーの業務実態を見える化して、労働環境の改善を行った事例をご紹介します。
他社がどのような取り組みを行ったかを、ぜひご覧ください。
◆導入事例1
全国のホテル・レストランなどの外食店に業務用食品を卸しているUCCコーヒープロフェッショナル様は、約10万件の外食店への配送を行なっていますが、ドライバーの業務実態が見えないという課題の解消に向け、Cariotの導入を決定しました。
Cariot導入後は配送効率を20%改善したほか、実際の走行ルートを可視化しました。今後はデータを生かし、効率的なルートの作成や重複を改善することで、人員削減や配送の効率化につなげたいとしています。
◆導入事例2
中部日化サービス株式会社様では、サービススタッフの長時間労働が常態化していたことから、Cariotを導入し、作業時間・移動時間の実態を把握することで業務効率化に取り組みました。
Cariot導入後は、限られた移動時間で効率的に業務を行えるようになりました。現在は、全スタッフの残業時間が60時間を超えないよう、労働時間の削減に取り組んでいます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
これからもCariotは、より便利に使っていただくための機能の開発を進めてまいります。
Cariotを労働環境の改善のために、どのように活用したらよいかなど、ご質問などがありましたら、下記フォームよりお気軽にお問い合わせください。
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