物流改革が大きく期待されるLaaSとは?
こんにちは。Cariot(キャリオット)ブログ編集部です。
物流業界には、輸送の効率化に向けた取り組みや人手不足、労働人口が減少する未来への対応策などいくつもの問題があります。それらの諸問題を解決するため、国が法律を改正し、各企業がさまざまな取り組みを行うなどの対策が進められています。
このような努力が続けられるなか、国土交通省が「LaaS」という将来的なビジョンを打ち出しました。
今回は、これからの物流業界を大きく変える可能性がある「LaaS」について調べました。
【目次】
1.物流の「この先」を明るく照らす⁈「LaaS」とは
1-1.物流の最適化を目指す「LaaS」という概念
1-2.国内企業も相次いで参入する「MaaS」、日本と海外の実証実験
1-3.LaaS実現は物流業界の問題解決への糸口⁈
2.「LaaS」実現に向けた具体的な実証実験
2-1.トラックの隊列自動走行実用化に向けた成果と課題
2-2.「自動運転技術」は人手不足解消の手段
3.この先の物流はどうなる?
1.物流の「この先」を明るく照らす⁈「LaaS」とは
1-1.物流の最適化を目指す「LaaS」という概念
「LaaS」とは「Logistics as a Service/ロジスティクス アズ ア サービス」の頭文字を取ったものです。
2020年1月3日付の業界誌「物流ニッポン」では、国土交通省道路局が、物流のシームレス化に向けた道路政策のビジョン案として「物流版MaaS=LaaS」と位置づけ、「ビジョン案の方向性のひとつとして検討している」と報道しています。
同局はこのビジョンの中で、幹線道路でのトラック隊列走行・ラストワンマイルでのロボットやドローンでの配送の取り入れ・最適なルートや運送方法の選択・これまで労働力が必要となるシーンの省人化を掲げています。
ただ、この案は20年後の2040年というかなり先の道路政策を示すもので、現時点で国の指針としての「LaaS」の方向性は、明確には定まっていません。
将来的な取り組みとして、無人配送ビークルなどでの移動を可能にするための整備も盛り込んでいますが、それらを実現するためにはさまざまな施設や手段を共有する仕組みづくり・法整備、さらなるテクノロジーの進歩などが必要となるため、LaaSを実現するために、今すぐ具体的な行動に動き出すというわけにはいかないのが現実です。
実現まで多くのハードルを越える必要があるなかで「未来のビジョン」が示される背景には、慢性化する人手不足とドライバーの高齢化といった物流業界の問題があります。
日本のドライバー不足が深刻さを増す背景には、ECサイト市場が拡大したことで配送の小口多様化が増加し、ドライバーの業務負担がより重くなっていることが挙げられます。
ドライバーの負担を軽減する方法として、海外では、ラストワンマイルを自動化ロボットやドローン配送への切り替えなどが行われるようになってきました。日本でも、これらの「自動化」に関して民間企業が実用化に向けた実証実験を行っています。
画像:経済産業省:「自動走行ロボットの社会実装に向けて」
1-2.国内企業も相次いで参入する「MaaS」、日本と海外の実証実験
ところで「LaaS」や「MaaS」といわれても、何を指しているのか分かりにくいかもしれません。
まず、「MaaS」とは、「Mobility as a Service/モビリティ アズ ア サービス」のことで、モビリティは「移動性」という意味です。
日本における「MaaS」とは、「特定の移動手段に限定せず、あらゆる交通機関でICT(情報通信技術)を利用してつなぎ、効率よく便利に使えるようにするための仕組み」のことで、移動手段・最適ルート・宿泊先の手配など個々の手段を最適化し、利用者の利便性を高めるサービスのことを指します。
最近では鉄道各社やバス運行会社が協力し、各地でさまざまなサービスが展開されるようになってきました。
政府は、18年6月15日に「次世代モビリティ・システムの構築プロジェクト」を閣議決定し、「MaaS」を「次世代モビリティ・システムの構築プロジェクト」と位置づけ、自動運転などと共に、取り組みの重点分野としました。
その後、同年10月にトヨタ自動車とソフトバンクが提携し設立した「MONET Technologies」のニュースでも「MaaS」が注目されました。この他にも、JR東日本、NTTドコモなど各企業が相次いで参入しています。
【参考資料】国土交通省政策研究所長 露木伸宏「MaaSについて」
【参考資料】国土交通省政策研究所統括主任研究官 林正尚「MaaSをめぐる国内の動向」
1-3.「LaaS」の実現は物流業界の問題解決への糸口⁈
話を「LaaS」に戻します。
20年度まで実施されている現在の「総合物流施策大綱」では、
- IoT(モノのインターネット化)、ビッグデータ、AI(人工知能)等の活用によるサプライチェーン全体の最適化の促進
- 隊列走行および自動運転による運送の効率化
- ドローンの活用
- 物流施設の自動化、機械化
- 船舶のIoT化、自動運航船
を掲げています。
テクノロジーが発展することで、これらの施策が現実になれば、属人的な要素に頼らざるを得なかった部分を自動化し、業務負担の軽減と効率化を同時に実現できるようになります。
「自動運転」については現在、22年度の「後続車無人隊列走行システムの商業化」に向けた実証実験が行われています。
いきなりすべての車両を自動化するのは難しいかもしれませんが、一部であってもそれらが実現すれば、慢性的な人手不足解消への糸口となる可能性があります。
2.「LaaS」実現に向けた具体的な実証実験
2-1.トラックの自動走行実用化に向けた成果と課題
現在、新東名高速道路で後続車無人のトラック隊列走行の実証実験が行われています。
国土交通省の「自動運転に対応した道路空間に関する検討会」では、これらの実証実験を元に議論が行われていましたが、19年11月16日に「21年度までに後続車無人の商業化」に向けた中間とりまとめが示されました。
その中で、自動隊列走行を実現するために、技術面で3つの課題が挙げられました。
- 大型車の合流阻害
- SA/PA内で歩行者接近した際の対処
- GPS測位精度の低下
画像:国土交通省「新しい物流システムに対応した高速道路インフラ活用の方向性 中間とりまとめ」
この実証実験は、一般の車両が走行する中で行われていますが、同検討会では、一般道や高速道路に自動運転車両専用レーンを設けるなどして、他の車両と分離し、安全性を確保する必要性が提言されました。
また、トラックの隊列形成・分離スペースを備えた物流拠点等の整備の必要性の検討に対しての要望も出されています。
着実に自動運転の実証実験が進むなか、21年度には、高速道路の合流制御方法に関する技術的な検討、GPS制度が低下することへの対策など、新たな実証実験を行う予定となっています。
2-2.「自動運転技術」は人手不足解消の手段
人手不足に悩む物流業界にとって「自動運転技術」は、問題を解決するひとつの方法です。
しかし、自動運転を行うときは、ドライバーが乗車して運転するときと同じように、車両と人の安全確保、事故を起こさないようそれらを確実に運用することが必須項目です。
国土交通省が行なった実証実験での課題として、一般道で自動運転を止めざるを得なかった要因として、路上駐車・自転車や歩行者の回避・信号機や交差点での対応などが挙がっています。
完全な自動運転に切り替えるためには、ドライバーが日常的に行なっている路上での複雑な判断を、自動かつ適切に行えるようになることが必要です。
画像:国土交通省「自動運転に対応した道路空間のあり方「中間とりまとめ」 ~政府目標達成のために道路インフラが早急に取り組むべき事項を提言~」
同時に、自動運転を含む「LaaS」実現のためには、法律の改正・技術の進歩・それに伴うガイドラインの策定など、さまざまな問題・課題をひとつずつ解決しなければなりません。
まずは、政府のロードマップに沿った2021年度の「後続車有人隊列走行システム商業化」、22年度の「後続車無人隊列走行システムの商業化」が待たれます。
3.この先の物流はどうなる?
近年、物流のデジタル化を後押しする、複数の改正法が施行されています。例えば、以前、Cariotブログでもご紹介した「特殊車両申請の簡素化」もその一環です。
近い将来、自動運転技術が実現されたら物流業界を取り巻く諸問題を解決する道筋が立てやすくなりますし、持続的かつ継続可能な物流の維持にもつながります。
「LaaS」という概念が施策として、現実的な運用を始めるまでにはまだ時間がかかりますが、「LaaS」の実現より先に、可能な部分から順次デジタル化を進めてみてはいかがでしょうか。
例えば、クラウドを利用して日報の自動作成や車両の走行状況の収集、ドライバーごとの詳細な情報を一元管理するなど、アナログ管理では得られなかったメリットを得ることができます。
21年度からは新たな「総合物流施策大綱」が始まります。
その中で「LaaS」がどのような位置付けになるかまだ分かりませんが、「LaaS」のスムーズな運用を実現するためには、運用面の改善も必要になります。関係省庁が協力し、持続可能な物流の実現に向けた施策を打ち出すことが期待されます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
これからもCariotは、より便利に使っていただくための機能の開発を進めてまいります。
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