物流DX推進に向けた官民連携の具体的な取り組み〜物流効率化に向けた“ノー検品”・“食品の製造年月表示化”の実証実験へ〜
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無料でダウンロードこんにちは。Cariot(キャリオット)ブログ編集部です。
物流業界では、以前から課題となっているドライバー不足に加え、激甚化する自然災害への対応や、現在は新型コロナウイルス感染症の感染拡大による「巣ごもり需要」の増加により配送・物流量が急増しています。今後、新たなニーズへの対応も求められています。
今回はこのような「物流クライシス」が深刻さを増し、さらなる物流効率化が求められる今、関係省庁や民間企業が行っている業務効率化・生産性向上の施策・取り組みについてお伝えします。
【目次】
1.物流効率化に向けた官民連携の取り組み
1-1.物流DX推進へ。国土交通省の予算概算要求
1-2.逼迫した状況が続く加工食品分野の物流
2.具体的な取り組み1:国土交通省による飲料・酒類の“ノー検品化”の実証実験
3.具体的な取り組み2:賞味期限表記の「年月」表記による物流効率化
4.Cariotを活用した物流効率化の取り組み
4-1.Cariotの導入事例
4-2.業務効率化に役立つCariotの機能
1.物流効率化に向けた官民連携の取り組み
1-1.物流DX推進へ。国土交通省の予算概算要求
関係省庁や民間企業・事業所が、柔軟で強靭な物流体制の構築に向けたさまざまな取り組みを推進する中、国土交通省は2020年9月25日、2021年度予算の概算要求を公表しました。
同予算概算要求の「物流分野」では、物流総合効率化法(物効法)の下、コロナ禍における新たなニーズに対応するため次世代モビリティ・物流DX(デジタルトランスフォーメーション)推進を掲げ、物流のさらなる生産性向上への展望を示しました。
具体的な予算額に注目すると、物流生産性向上の推進事業・補助事業として、物流の効率化、非接触・非対面型物流への転換促進を図ることなどのほか、労働力不足や、コロナ禍における物流の新たなニーズに対応するための新技術として、AI(人工知能)・IoT(モノのインターネット化)の活用に向け、前年度の当初予算から4.5倍となる2億2,900万円を計上しました。
また、「物流生産性向上推進調査事業」を新たに創設し、コロナ禍における新たなニーズに対応するため、貨客混載、中継輸送、宅配ボックス等を活用した非接触・非対面の輸送モデルの構築向けた実証実験・検証を行っています。
この他にも、生産性向上の推進、災害に強い物流システムの構築、アジアを中心とした質の高い物流システムの構築・国際標準化の推進も掲げられました。
概算要求内容から、物流業界は今後、「物流総合効率化法」に沿い、輸送網の集約・モーダルシフト推進・輸配送の共同化など、業務の自動化・省人化を実現するためのシステムや機器の整備が求められることが予想されます。システムの構築やデジタル化が必要な場合は、国からの補助金や税制優遇、保険制度などの支援を活用しながら進めてみてはいかがでしょうか。
画像:「荷主と運送事業者の協力による取引環境と長時間労働の改善に向けたガイドライン 加工食品物流編」
1-2.逼迫した状況が続く加工食品分野の物流
物流を支えている企業・事業所は、コロナ禍になる以前からドライバー不足の問題に加え、ECサイトの発展による物流量の増加や物流網の多元化、荷物の小口多頻度化など多くの課題に対応が必要な状況が続いています。
国土交通省は、そのなかでも消費者の多様なニーズや大規模災害等の影響で逼迫した状況が続く物流分野は「加工食品物流」であると指摘しました。
同省の調査結果によると、加工食品は荷待ち件数が特に多い分野であるとし、懇談会を設置、開催し課題の整理と解決策の検討を行い、サプライチェーン全体で解決を図るため、「荷主と運送事業者の協力による取引環境と長時間労働の改善に向けたガイドライン 加工食品物流編(以下、「加工食品のガイドライン」)」を策定、公表しました。
加工食品分野における「課題解決のため取り組むべき課題」、「解決のために必要な項目」は下記のとおりです。
■課題解決のため取り組むべき課題
<労働条件の改善>
- 受発注条件の見直し
- 荷待ち時間の削減
- 荷役時間の削減
- 検品時間の削減
■解決のために必要な項目
<業務効率化>
- 納品伝票の電子化を最終目標に効率化を検討
- 外装表示の標準化
- パレット・外装サイズの見直し
- コード体系・物流用語の標準化
業務効率化や生産性向上の課題解決のためには、自社だけでなくサプライチェーン全体で業務効率化への取り組みを推進する必要があります。そのためにも、まず初めに自社の業務内にあるムリ・ムダを発見することが必要です。そのためには、正確で具体的なデータを取得できる体制の構築が欠かせません。
次項では、食品・飲料など生活必需品を扱う分野における物流効率化の取り組みに向けた実証実験の実施と課題についてご紹介します。
2.具体的な取組み1:国土交通省による飲料・酒類の“ノー検品化”の実証実験
過去のCariotブログでも度々お伝えしてきましたが、物流業界のドライバー不足は大きな課題となっています。持続可能な物流を維持するためには、ドライバーの長時間労働の主な要因として挙げられる荷待ち時間の削減や荷役作業の軽減を含めた業務全体の効率化と併せ、2020年4月に全面施行された「働き方改革関連法」に沿った労働環境の改善が急務です。
前項でもお伝えしましたが、「荷待ち時間」、「検品時間」が多い品目は加工食品です。
国土交通省は、今後の物流分野の施策として「加工食品」分野と共通の課題が多い分野として「飲料・酒」分野を挙げました。同省は、両者が近似したサプライチェーンを利用し、近似の商品・製品を取り扱っていることを指摘しています。そのため、加工食品分野と同様に、取り組むべき課題として、トラック運送事業者・発着荷主等の関係者の連携による業務効率化が必要とし、それらの課題解決に向けた分科会を設置、検討を開始しました。
画像:国土交通省「令和2年度の輸送品目別取組強化事業について」
分科会設置に伴い、2020年11月には検品作業の簡略化ではなく検品自体を実施しないことを想定した「ノー検品化」と、メーカー間における車両の相互活用などの実証実験を行います。結果は2021年2月にも最終的な取りまとめを行い、既に公表されている加工食品のガイドラインに追加されます。
実証実験にあたり、国土交通省は下記の4点を飲料・酒類の物流効率化に向けた課題として挙げました。
- 物量の多さ
- 物流量が繁閑の差が大きい
- 付帯作業の多さ
- 帰り荷がないため業務が非効率になる
また、上記の項目を踏まえ、「飲料・酒類」分野において業務効率化を実現するための重点課題として下記の5項目を挙げています。
1.出荷情報の事前共有によるノー検品
検品時間の削減、荷待ち時間の削減、滞留時間の削減、稼働率向上等
2.年月日表示と年月表示の作業比較・検討
物流効率化、食品ロスの削減、卸事業者の作業時間削減等
3.付帯作業の見える化(自動販売機)
作業の分類と時間計測によってコストの見える化、業務効率化等
4.付帯作業の見える化(小売・飲料点配送)
ドライバーの生産性向上、長時間労働の削減等
5.車両の相互活用
車両台数の削減、1台あたりの実写距離の向上等
「ノー検品」を実際の業務に取り入れることができれば、荷待ち時間や付帯作業の削減と受注から納品までのリードタイムの延長が実現します。検証はこれからですが、今後、ドライバーや現場の作業負担軽減及び生産性向上に向け大きく前進することが期待されます。
飲料・酒類分野の生産性向上のためには、日々の作業だけでなく複雑な流通構造にも目を向ける必要があります。
通常、飲料・酒類分野の流通は、メーカー・卸売事業者・小売業者など複数の事業者が関わっています。納品・販売においても直販・自動販売機・ECサイトなど販売形式が多岐に渡るといった構造面での課題に加え、輸送品目ごとの特性や課題の違いを考慮し、品目別の対策が必要とされる分野です。
同分野で安定した物流を維持するためには、荷主と輸配送事業者間で出荷情報などをデジタル化し、正確なデータ・情報を素早く正確に共有することや、出荷・入荷のタイミングに関するルール制定など、サプライチェーン全体でこれまでの商慣習の枠を超えた取り組みを行うことがカギとなりそうです。
画像:国土交通省「加工食品物流における生産性向上及びトラックドライバーの労働時 間改善に関する懇談会 飲料・酒物流分科会/ トラック輸送における取引環境・労働時間改善 東京都地方協議会 飲料・酒物流改善WG 合同会議」
3.具体的な取り組み2:賞味期限表記の「年月」表記による物流効率化
物流効率化に向けた施策のひとつに、賞味期限を「年月日」の表示から「年月」表記に変更する方法があります。商品に記載する賞味期限を「年月」表示にすることには、下記のようなメリットがあります。
<「年月」表示のメリット>
- 賞味期限の逆転によって商品の転送ができなくなっていた在庫の転送が可能
- 日付後退品・返品数・不良在庫を削減
- 倉庫の保管スペースが確保できる
- 荷役業務や品出し業務の削減
- 「食品ロス」問題にも対応できる
従来、在庫の日付管理を行う場合、日付順に荷物をピックアップする必要があるため作業に時間がかかること、貨物の小ロット化などにより入出庫作業が非効率であること、車両の待機時間が長引くことなどがドライバーの長時間労働の原因となっています。
また、解決すべき問題として、小売店への納品は製品の製造日から賞味期限までの1/3の期限内とする「1/3ルール」が挙げられます。賞味期限を「年月」表記にすることで、商品を月単位で管理しロットをまとめることが可能となり、倉庫機能を強化するとともに生産性向上効果が見込めます。
画像:国土交通省「荷主と運送事業者の協力による取引環境と長時間労働の改善に向けたガイドライン 加工食品物流編」
賞味期限の「年月」表示には食品ロス削減効果も見込まれます。
環境省が2020年4月14日に公表した資料によると、日本国内の食品ロスは612万トンとなっており、その内、事業系が328万トン、家庭系では284万トンとなっています。商品・製品の「年月」表示への切り替えは、物流効率化と食品ロス削減の双方を実現するために必要な方策といえるでしょう。
食品・飲料等の物流効率化を進めることは、企業利益の向上にも寄与します。そのため、すでに大手食品メーカーでは賞味期限の表示を「年月」変更する取り組みが始まっており、2019年10月1日に「食品ロスの削減の推進に関する法律」(略称:食品ロス削減推進法)が施行されたことも、この取り組みを後押ししています。
現在はメーカーごとに「年月」表示への変更に取り組んでいますが、今後は、荷主側の理解をさらに促進することで、より最適な在庫管理・配送ロットの最適化を図りながら、サプライチェーン全体で課題の解決につながる取り組みが期待されます。
画像:「荷主と運送事業者の協力による取引環境と長時間労働の改善に向けたガイドライン 加工食品物流編」
ここからは、商品・製品の賞味期限表示を「年月日」から「年月」に順次移行している企業の事例をご紹介します。
■大手食品加工メーカー
2020年9月以降に製造され賞味期限が1年以上の家庭用67品目について賞味期限を延長し、表示方法を「年月」表記に変更しました。
同社は、食品ロスが配送・納品の生産性低下、労働力不足が続く物流業界の負担となっているとし、賞味期限を「日別」で商品管理することにより、食品ロス量の低減・納品頻度、期限の効率化等によるサプライチェーン全体の課題の解決に取り組む他、プラスチック使用量の削減、モーダルシフトの活用によるCO2排出量削減など、サプライチェーン全体の課題解決に向けた取り組みを行うとしています。
■大手食品メーカー
サプライチェーン全体での食品ロスの削減と物流効率化、持続可能な社会の実現に向けた課題の解決に取り組んでいる同社では、すでに一部の商品で「年月」表示を行なっていましたが、食品ロス削減や物流効率化に向け、2020年2月から順次、賞味期限が1年以上の家庭用商品の賞味期限表示を「年月」に変更する取り組みを実施しています。今後、「年月」表示の対象商品を100品目以上に増やし、2020年度中の移行完了を目指すとしています。
4.Cariotを活用した物流効率化の取り組み
4-1.Cariotを活用した効率化取り組み事例
モビリティ業務最適化クラウドCariotは、「”ムダな時間”を”価値ある時間”に 人とモノの移動に関する業務の最適化を支援するクラウドサービス」をビジョンに掲げ、輸配送業務を行う企業様だけでなく、フィールドサービスを行う企業様にもご利用いただいています。
今回は、その中から具体的な導入事例をご紹介します。
■食品輸送サービス:配送先での滞在時間の可視化による生産性向上の取り組み
https://www.cariot.jp/blog/2020/07/30/minicase_part5/
同社は、小売店や外食産業向けの配送を中心に、保管・仕分け・配送まで手掛ける食品輸送サービスを行なっている企業様です。
Cariotの導入によって、車両管理業務の効率化・効果的な安全運転管理を行うことができるようになり、データ分析機能によってデータを見直した結果、それまで顕在化していなかった輸配送効率業務の課題の発見とともに、課題に対して取り組むべき施策や今後の改善策が見えてきました。
今後は、配送先への滞在時間・業務内容の最適化、各業務の切り分けによる運賃・料金の適正化を実現に向けた取り組みを実施していく予定です。
■化成品輸送業:不要な待機時間削減による配送効率最大化
https://www.cariot.jp/blog/2020/09/07/minicace_part7/
「ホワイト物流推進運動」に賛同されている同社様は、ドライバーの労務管理の見直しを行う中で「納品先での待機時間」に対する取り組みの必要性をお考えでした。また、物流管理における作業工数を削減したいとのご要望がありました。
Cariotの導入によって、物流管理にかかる工数を85%削減し、配送先ごとの作業時間・待機時間を可視化することで長時間滞在の原因解明・納品時間の目標値の設定を実施しています。また、待機時間の削減により、今後は年間約3,000円件のコスト削減が期待できると見込まれています。
4-2.業務効率化に役立つCariotの機能
業務の最適化や効率化を実現するためには、具体的で的確なデータの取得と分析が欠かせません。
Cariotは輸配送業務・フィールドサービス業務にお役立ていただけるさまざまな機能をご用意しています。
・走行履歴
いつ・どこを・どのような速度で走行し、どこで・どの程度の時間を滞在したかを振り返り確認することができます。地図上で実際の走行ルートの確認も可能です。
・走行データ分析
複数の走行履歴を地図上で比較・分析できる機能です。無駄な走行・活動エリアの重複を発見し、より最適な走行ルートを見つけるサポートします。
・駐車イベントマップ
車両が待機・滞留している場所を地図上で確認することができます。
上記以外にも、配送計画作成機能や訪問自動記録機能など、お客様の課題解決に役立つ機能をご用意しています。
詳しくは、Cariotの機能紹介ページをご覧ください。
この機会に、課題の発見・改善に向けCariotの導入をぜひ、ご検討ください。また、お困りごとや疑問等がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
Cariotは、お客様からのご意見・ご要望を取り入れながら、より便利にお使いいただくための機能の開発を進めてまいります。
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