精度と網羅性を高める 交通情報の最前線

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CUNEMOの森です。今回は、私たちの生活や業務で無くてはならない交通情報についてご説明します。
 
■ラジオの交通情報番組は必須だった
話は1990年代以前に遡りますが、まだカーナビが普及する前になります。当時、朝夕のクルマ通勤、あるいは日中の業務移動で、ラジオの交通情報番組は必須情報でした。1時間に2〜3回しか放送が無いため、それを聞き逃すまいとラジオに耳を傾けた思い出があります。
「○○交差点を先頭に北方向が2キロの渋滞」という状況放送でしたので、リスナーは頭の中で、「ならば15分くらい抜けるのにかかるな・・」と自分の場合に置き換えながら、到着予定を予想していました。不慣れな道では、この読みを大きく誤ってしまうこともしばしばありましたが、その場合「仕方がない」と諦めるしかありませんでした。
今でしたら、カーナビやスマホにはリアルタイムに近い渋滞状況が表示され、それを加味した迂回ルートの提案や到着予定時刻も表示されます。こうした予想はかなり正確ですので、「いつ到着する」を知らせることで、相手を待たせてイライラさせることはありません。まさに隔世の感があります。
 
■1970年の大阪万博を機にスタート
日本で交通情報がラジオなどで提供されるようになるきっかけは、1970年3月から開催された大阪万博です。財団法人日本道路交通情報センターが設立され、交通管理者(警察)および道路管理者(国や地方自治体、当時の日本道路公団など)の委託を受けて交通情報提供が開始されました。
主にラジオやテレビを通じて交通情報を知るスタイルに変化が始まったのは、カーナビが普及するようになる1990年代半ばです。1995年に財団法人道路交通情報通信システムセンター(VICSセンター)が設立され、それまでの音声による人へ情報の伝達から、データによるカーナビという機器への情報伝達が開始されました。
その後VICSはカーナビの交通情報の代名詞として広く利用されるようになり、今年3月までに利用が合計5千万台を越えるまでとなっています。(出典:VICSセンター(一般財団法人 道路交通情報通信システムセンター)

出典:VICSセンター(一般財団法人 道路交通情報通信システムセンター)

出典:VICSセンター(一般財団法人 道路交通情報通信システムセンター)


 
こうした交通情報の提供は、道路にセンサーを設置して、専用回線でセンターに繋げるなど、インフラ整備と維持に巨額の費用がかかることもあり、官民連合で運営されており、今もカーナビの機器の購入代金の一部がその費用に充てられています。
道路センサーを設置する方式の弱点としては、全国全ての道路の情報を提供することは事実上不可能であることです。また、センサーは道路脇に設置されているため、センサー直下の駐車車両や、生い茂った街路樹を間違って渋滞と認識するなど、弱点もあります。
 
■道路センサー型から車載プローブ型へ
そこで2000年代になって始まったのが、車両側にセンサーを設置して情報を集約するという「プローブ方式」です。多数の車両の走行状況のデータを蓄積して、それに基づいてVICSでは得られない広範囲の道路の交通情報を提供する方法です。トヨタ、日産、ホンダなど主要な自動車メーカーが提供しています。お手持ちの車にメーカー純正の通信型カーナビが装着されていれば、プローブ情報を提供する側になっているはずです。日々の交通情報としてだけでは無く、東日本大震災の直後には、ホンダが走行可能な道路がどれなのかを、プローブ情報を元に公表するなど、災害支援面での活用も行われています。
 
■ネットにつながるデバイス
ところで、こうした交通情報の提供サービスは、長らく通信インフラを巻き込んだ自動車や電機などのハードウエア企業が担ってきたのですが、ブロードバンドインターネットとスマートフォンの普及により敷居が大幅に下がったため、ITサービス企業による参入が急速に進んでいます。
筆頭に挙がるのがGoogleです。スマホで提供するマップアプリの利用者からリアルタイムの移動情報を集めて分析し、独自の交通情報を日本を含む世界各地で提供しています。そして、今年になってからは、渋滞状況を加味したルート検索をAPIでも提供するようになったため、他のシステムやサービスの中に組み込んで利用できるようになりました。最適な配送ルートを自動で組んだり、「いつ到着するか」を自動的に知らせたりなど、従来は人間の関与が少なからず必要だった部分を肩代わりしてくれるようになりました。

▲Googleマップのリアルタイム交通情報表示

▲Googleマップのリアルタイム交通情報表示


 
Googleに限らずITサービス企業から見れば、車両も「ネットにつながるデバイス」の一つです。従来のプレーヤーには無い柔軟な発想で、コンシューマ向け、業務向けそれぞれにおいて、様々なサービスが提供され始めています。IoT(Internet of Things)、コネクテッドカー、テレマティックスなどの用語でも語られるこの種の新しいトレンドは、単なる交通情報の域を超えて、カーシェアリング、自動運転など、従来には存在しなかった新しいカーライフをもたらしてくれることでしょう。

 
※本記事の情報、及び画像は、記事作成時点のものです。詳しくは最新の情報をご確認ください。

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