ITS・テレマティクスの歴史(後編)〜世界が期待する「Smart City」の未来〜

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■「ITS世界会議」に見る交通システムの世相
10月にメルボルンにて第23回ITS世界会議が開催された。ITS世界会議とは、年に一度世界中のITS関係者が集まる国際会議である。1994年のパリ会議以来、欧州、アジアパシフィック、北米の3地域持ち回りで毎年開催され、そこでのトピックがいわばITSの世相を映す鏡となっている。

※ITSとは
Intelligent Transport Systems(高度道路交通システム)の略。人と道路と自動車の間で情報の受発信を行うことで、道路交通が抱える課題(事故、渋滞、環境対策など)を解決するシステム。
 

出典:「第23回ITS世界会議メルボルン2016」公式HPより

出典:「第23回ITS世界会議メルボルン2016」公式HPより


 
第1回当初はITSという言葉自体が新しかったこともあり、政策ビジョンを語る場が多かった当会議だが、前編で記したような具体的な施策や技術・サービスが実現するレベルとなると、各国の行政担当者や企業が、導入効果の実証や、新技術・サービスのデモンストレーションが行われるようになった。
近年のトピックはやはり安全運転支援・自動運転、そしてIoT・ビッグデータある。2010年にGoogleが自動運転開発を発表して以来、センシング技術や制御技術のデモンストレーションを行うフェーズから、自動運転実現に向けたより具体的な議論へと深化している。また、安全運転支援・自動運転によって副産物的に得られる膨大な車両データや道路環境データ(道路構造、周辺施設立地、交通量等)、道路上のセンサから得られるデータや他交通機関のデータをいかに活用するかということも話題となっている。
 
■2016年のキーワードは「MaaS」「Smart City」
さて、先月開催されたITS世界会議のテーマは、世界一住みやすい街と呼ばれるメルボルンらしく、”Enhancing Livable Cities and Communities”(住みよい街とコミュニティへ)であった。
ここで目を引いたキーワードがMaaS(Mobility as a Service)、そしてSmart Cityという言葉である。MaaSとは文字通りモビリティをサービスとして提供するという意味である。カーシェアリングやUberのようなサービスがそれに近く、状況に応じて最適なサービスを提供するというような概念も含まれる。さらにSmart Cityとは、モビリティも含めて街全体をプロデュースするという思想である。従来の道路では自動運転の実現には多くの障壁が存在するが、Smart Cityでは最初から自動運転やMaaSを前提とした空間設計を行うことも想定されている。
 
出典:IoT NEWS「スマートシティ(Smart City) とは」より

出典:IoT NEWS「スマートシティ(Smart City) とは」より


 
■既に始まっているクルマへの価値観の変化
実のところ私にもこのような社会が到来することは俄かには想像しがたい。しかし2025年までには全世界の労働人口の75%がミレニアル世代(Millenials:1980年代から2000年代初頭に生まれたデジタルネイティヴな世代)で占められるという。若者のクルマ離れなどと言われていた世代が社会の主役となるその頃には、クルマに対する価値観は様変わりし、モビリティサービス産業が社会に浸透しているかもしれない。
 
▼記事の前編はこちら
ITS・テレマティクスの歴史(前編)〜クルマのデータ活用の幕開け〜

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