ドライバー・事業主への罰則は?トラック/乗用車の「過積載」リスクとルール
こんにちは、Cariot(キャリオット)ブログ編集部です。
車両に規定の積載重量を超えた荷物を載せて走る「過積載」。過積載の状態でクルマを走行させた場合、重大な事故に繋がる可能性があり違法行為とされています。
運送関連企業様をはじめ、営業車を保有する企業様においても気になっているという方は多いのではないでしょうか。
そこで今回は、トラック、普通乗用車における「過積載」の定義やリスク、過積載違反をした場合の罰則や取り締まりの動向など、過積載について把握しておきたい事項をまとめてご紹介します。
【目次】
1.慢性化しているトラックの「過積載」
1-1.トラック輸送業界にみる「過積載」に至る背景とは
1-2.4tトラックの積載量は一律4トンではない!トラックの「過積載」定義
1-3.トラックにおける「過積載」3つのリスク
2.普通乗用車の「過積載」とは
2-1.「最大積載量」がない普通乗用車
2-2.乗用車の積載量は「車両総重量」を目安に
2-3.普通乗用車における「過積載」3つのリスク
3.把握しておきたい、過積載のルール・罰則
3-1.「過積載」を禁止している法律
3-2.3ヶ月以内の運行禁止⁉︎ 事業者・運転者・荷主に対する罰則は?
3-3.普通乗用車独自の「過積載」ルール
4.「過積載」防止のための最新動向
4-1.「首都圏大規模同時合同取締」実施も!
4-2.燃費向上で道路にも環境にもやさしい走行を
1.慢性化しているトラックの「過積載」
1-1.トラック輸送業界にみる「過積載」に至る背景とは
1990年(平成2年)の貨物自動車運送事業法施行、2001年(平成13年)からの小泉内閣「聖域なき構造改革」などにより、運送業界への新規参入の条件緩和が進み、過当競争が顕著となりました。
※出典:公益社団法人「日本のトラック輸送産業現状と課題2018」
上記表のとおり、トラック運送事業者数はピーク時の07年度(平成19年度)には1.5倍の6万3千社を突破、競争の激化は運賃の低下を招きました。運搬重量に対し運賃支払いが行われる重量精算制の場合、1台のトラックにできるだけ荷物をたくさん積んだ方が1回の運行でより多くの運賃収入を受け取ることができます。そこから「過積載」になるまで荷物を積み、運賃の値下げに応じようとする会社が増加してきたのです。
また、荷主のコスト重視の方針により、1台のトラックに積載量を超過した荷物を積ませてしまうといったケースも多発するように。
1-2.4tトラックの積載量は一律4トンではない!トラックの「過積載」定義
このように「過積載」が慢性化しているトラック輸送業界ですが、その積載量、果たしてどこまでが適正でどこからが違法となるかをご存じでしょうか?
その目安となるものが「最大積載量」で、自動車などに積むことができる最大限の荷物の重さのことを指します。それには以下の計算式が適用されています。
◆最大積載量の定義
最大積載量=車両総重量-車両重量-乗車定員(1人あたり55kg×人数)
この定義に当てはめると、例えば4t(トン)トラックの場合、すべてのトラックで4tの荷物を積めるわけでなく、トラックの重量と定員の重さを引いた数字が実際に積める重量となります。
例えば以下のような条件の場合、最大積載量は3t強となります。
7,500kg(車両総重量)−4,000kg(車両重量)−110kg(2名乗車)= 3,390 kg (最大積載量)
1-3.トラックにおける「過積載」3つのリスク
では実際、トラックが「過積載」を行うことによって、車両や周囲にはどのようなリスク、影響が生じるのでしょうか?以下に主なものをご紹介します。
◆トラック「過積載」のリスク
・制動力の低下
規定重量以上の荷物を載せることで、車両は当然重くなり制動力は低下します。車体コントロールが難しい状態になると、ちょっとしたカーブでバランスを崩したり、ブレーキが効きにくくなるなど、事故を起こしやすくなるリスクが高まります。
・車体のへのダメージ
荷物が最大積載量を超えた場合、重みによる車体へのダメージも懸念されます。車両の損傷やタイヤの脱輪・パンクの危険性などが高まります。同時にエンジンや制御装置といった部分へも負荷がかかるため、車両自体の寿命が短くなってしまうかもしれません。
・道路や周辺への影響
もともと重量があるトラックですが、「過積載」によりさらに車両総重量が増加した場合、道路への負荷も高まります。
例えば、制限重量を超えた12tトラック(制限値10t、超過2t)1台が、道路橋の床版の上を走る際の負荷は、制限値10tを積載したトラック約9台が走るときと同じといわれています。床版の破損によって、その上の舗装面も崩れてくることもあります。
周辺への騒音や震動といった交通公害の原因ともなります。
2.普通乗用車の「過積載」とは
2-1.「最大積載量」がない普通乗用車
前章ではトラックに対して積載量の限度が明確に設定されていることをご紹介させていただきました。では、営業車をはじめとする普通乗用車の場合はどうなのでしょうか?
車検証を見ても最大積載量の欄は空欄になっているかと思います。実は、主な用途が荷物運搬でないため積載量の定めはないのです。
2-2.乗用車の積載量は「車両総重量」を目安に
とはいっても、際限なく荷物を積んでしまうことはさまざまなリスクを伴います。そこで自動車メーカーなどでは、各車両における適正積載量を設けているケースも。多くの場合、車両総重量を目安として、車両総重量から車両重量と乗る人の重さを引いて出た重さを、安全に積める荷物の量としています。
しかしこの定義では、もし定員いっぱいの人数で乗車した場合には荷物を積むことができなくなってしまいます。
あるメーカーでは、そういった現実的な状況も考慮したうえで、以下のように定員分10kgまでの荷物は積載可能と定義しています。
定義:乗車定員×55kg+手荷物程度の重量(=乗車定員×10kg)
◆定員5名の乗用車に2名乗車した場合の目安
最大積載量:(5名×55kg)+(5名×10kg)= 325kg
325kg -(2名×55kg)= 215kg
積載量 = 215kg
2-3.普通乗用車における「過積載」3つのリスク
続いて、普通乗用車における「過積載」の主なリスクを具体的にみていきましょう。
◆普通乗用車「過積載」のリスク
・制動力の低下
トラックと同様に、普通乗用車も「過積載」によって制動力が低下します。ブレーキが効き始めてから停止するまでの距離が長くなることにより、十分に車間距離をとっていなかった場合、事故を引き起こす危険性が高まるでしょう。
・車体バランスが崩れる
乗用車はサスペンションのスプリングが柔らかいため、積載が片寄ると車体が下がり、マフラー等の足回りの部品が路面に干渉してしまう危険性があります。車体の重量バランスが崩れることで、操縦性が悪化する可能性も。
・渋滞の引き金に
総車両重量が重くなることで、上り坂では速度の維持が困難に。それが引き金になり、渋滞が発生してしまうことも考えられます。
3.把握しておきたい、過積載のルール・罰則
3-1. 過積載を禁止している法律
このように多くのリスクを含む「過積載」ですが、法律面からみると以下のように複数の法において禁止行為とされています。
・道路交通法
第57条
運転者は、積載重量を超えて積載して運転してはいけない。
・道路法
第47条
道路の保全・交通の危険防止のため、車両の幅、重量、高さ、長さ、最小回転半径の最高限度は、政令で定める。
・貨物自動車運送事業法
第17条
一般貨物自動車運送事業者は、過積載による運送の引受け、過積載による運送を前提とする事業用自動車の運行計画の作成、事業用自動車の運転者その他の従業員に対する過積載による運送の指示をしてはならない。
3-2.3ヶ月以内の運行禁止⁉︎ 事業者・運転者・荷主に対する罰則は?
そして、万一これらに違反した場合には、事業者・運転者・荷主にも罰則が及ぶ場合があることをご存じでしょうか?
<事業者>
自動車の使用者に対する主な処分(道路交通法)
・過積載車両に係る公安委員会による指示
過積載運転が行われた場合は、運転者に対して罰則等を適用するとともに、将来における過積載を防止するため、過積載を防止する措置を講ずるべき責任のある使用者に運行管理を改善させる必要があります。
この場合、公安委員会は車両の運行管理の改善を図るため、自動車の使用者に対し、過積載を防止するため必要な措置を執ることを指示します。
・過積載運転に係る自動車の使用制限処分
自動車の使用者が業務に関し過積載を下命し、又は容認した場合や、上記で公安委員会の支持を受けた自動車につき1年以内に再度過積載運転行為が行われた場合には、公安委員会は、自動車の使用者に対し、3ヶ月を超えない範囲内で自動車を運転し又は運転させてはならない旨を命ずることとなります。
<運転者>
過積載運行により事故を起こすと、違反点数、反則金のほかに、会社が処分されるだけでなく、民事訴訟法においては運転者に対しても賠償責任が生じることとなります。
<荷主>
荷主等は、運転者に対し過積載となることを知りながら、積載物を売り渡したり、引き渡したりしてはいけません(道路交通法第58条の5第1項)、これに違反した荷主等が、反復して過積載の要求をする恐れがあると認められるときは、警察署長から過積載の「再防止命令」(道路交通法第58条の5の第2項)が出されます。
違反点数・反則金・罰則に関しては車両の大きさや超過割合に応じて異なります。
罰則の詳細については、国土交通省 愛知運輸支局のHPをご参照ください。
3-3.普通乗用車独自の「過積載」ルール
乗用車特有の規定として、道路交通法では乗せられる荷物のサイズが以下のように定められています。
- 幅:左右は車体から出さない
- 長さ:前後は全長の1割までしかはみ出してはいけない
- 高さ:地面から3.8m(軽は2.5m)
上記を超える場合、出発地の警察署長の許可が必要となるため、業務において大きな荷物を乗せる必要が出てくる際にはあらかじめサイズを把握しておきたいですね。
4.「過積載」防止のための最新動向
4-1.「首都圏大規模同時合同取締」実施も!
事故発生時に重大事故の原因となる危険性が高いとされている「過積載」は、「シートベルト非着用」「違法駐車」と並び、“新交通三悪”のひとつとされています。そんな悪質な行為に対し、国土交通省、警視庁、関東運輸局などは、首都圏の高速道路や主要一般道などで「首都圏大規模同時合同取締」を行うなど近年取り締まりを強化しています。道路法、道路交通法、道路運送車両法の“道路3法”合同取り締まりによって、違反の抑止効果をより向上させるといった目的があるようです。
そのなかで特に重視されているのが、車両の幅、重量、高さなどの基準をオーバーした車両制限令違反です。道路の老朽化が叫ばれるなか、過積載などの重量違反車両の通行に起因する大きなダメージを少しでも防ぎたい意向もあるようです。
4-2.燃費向上で道路にも環境にもやさしい走行を
「過積載」の重い車両を動かすためには、通常よりも多くの燃料を消費します。
19年10月、車両に関する税制の改正があり、「自動車取得税」が廃止となり「環境性能割」が導入されましたね。燃費性能がよく、より環境性能に優れたクルマの方が税負担が優遇されるという新税制が示すとおり、クルマの走行においても道路や環境に配慮した運行がますます望まれるようになりました。
事業主、荷主、ドライバーとそれぞれの立場から、「過積載」のリスクを考え、地球にやさしい選択を行えるようになるといいですね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
これからもCariotは、より便利に使っていただくための機能の開発を進めてまいります。
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