一般貨物自動車運送事業の標準的な運賃の現状〜コロナ禍に「標準的な運賃の告示制度」を受けた業界の反応とは〜

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こんにちは。Cariot(キャリオット)ブログ編集部です。

2020年4月24日、国土交通省は「一般貨物自動車運送事業に係る標準的な運賃について」を告示しました。
この制度は、貨物自動車運送事業法の一部を改正し「標準的な運賃の告示制度」(法附則第1条の3)として設けられたもので、取引の適正化を実現し、安定的な物流の維持・人材不足が深刻化するドライバーの労働条件が改善されることが期待されています。

今回は、「標準的な運賃の告示制度」を受けた業界の反応と現状、そして輸配送業務の効率化に役立つCariotの機能についてご紹介します。

【目次】
1.「一般貨物自動車運送事業の標準的な運賃」とは
2.「標準的な運賃」を交渉材料に使うことは難しい現状とは
3.安定的な物流維持のためにCariotができること

 

1.「一般貨物自動車運送事業の標準的な運賃」とは

過去のCariotブログでもお伝えしてきましたが、これまでも、輸配送事業の健全化、労働力不足を改善し社会生活・経済を支えるインフラとしての物流を安定的に維持するため、さまざまな法令・制度・罰則等が政府によって定められてきました。
しかし、現在においても輸配送事業者は従来の商慣行の中で必要なコストに見合った対価を受け取りにくく、十分な収益をあげられずに安定的な事業運営が難しくなるケースがあるなど、問題や課題が十分に解消されたとはいえない課題は残されたままです。

これらの問題を解決するため、2018年に議員立法により改正された「貨物自動車運送事業法の改正」では、長時間労働が問題視されているドライバーの労働環境改善・働き方改革を推進する観点から下記の4項目を挙げています。

「貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律(議員立法)の概要」
(1)規制の適正化/2019年11月1日施行
(2)事業者が遵守すべき事項の明確化/2019年11月1日施行
(3)荷主対策の深度化/2019年7月1日施行
(4)標準的な運賃の告示制度の導入/2020年4月24日施行

上記の4項目の内、(1)〜(3)はすでに施行されており、今回、告示された(4)「一般貨物自動車運送事業における標準的な運賃」は、国交省の運輸審議会による答申を経て、2023年度末までの時限措置として新たに設けられました。
答申で挙げられた趣旨は下記の3点です。

  • 一般に、運送事業者は荷主に対する交渉力が弱い、という背景がある
  • 2024年度からドライバーの時間外労働制限(年960時間)が罰則付きで開始されることを踏まえ、ドライバーの労働条件を改善する必要がある
  • 法令を遵守しながら物流事業の安定的かつ持続的な運営を行うためには、参考となる運賃を示すことが効果的である


画像:国土交通省「貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律(平成30年法律第96号)について


画像:国土交通省「トラック運送業における書面化推進ガイドライン

※「標準的な運賃」の具体的な金額の詳細は、国土交通省の資料をご覧ください。
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001341909.pdf

今回、国交省が提示した「標準的な運賃の告示制度」は、輸送事業者にとっては荷主との価格交渉を下支えするものとして期待されていました。
しかし、2020年上半期は新型コロナウイルス感染症の拡大の影響による物流量の大幅な減少や景気の先行き不透明感があり、同制度の告示から3か月以上が経過した現在も荷主との価格交渉の動きは鈍い状態が続いています。それだけでなく、実際に業務を行っている現場からは同制度に対する疑問や懸念の声が上がっているようです。運送業者にとってはプラス材料となるはずですが、なぜでしょうか。

次項では、この問題について掘り下げます。

 

2.「標準的な運賃」を交渉材料に使うことは難しい現状とは

新型コロナウイルス感染症拡大に伴う実体経済の悪化による荷動きの低下や収益の悪化傾向が続き、対面での活動が難しい状況下で告示された「標準的な運賃の告示制度」を活用した交渉の動きは鈍いままです。

コロナ禍での物流企業の状況は、どのようになっているのでしょうか。

国交省は2020年5月、「新型コロナウイルス感染症による関係業界への影響について」と題する調査結果を公表しました。
資料によると、貨物自動車運送業において、4月に運送収入が減少した事業者は14%でしたが、5月では29%と倍増しており、収益の悪化により約20%の事業者が国の資金繰り支援を活用しています。
また、雇用を維持することを前提とした計画的な休業を実施した事業者を支援するための「雇用調整助成金」を活用している事業所は約16%あり、活用に向けて検討している企業の割合と合わせると、約過半数は何らかの支援を受けている、またはこれから受ける可能性があることになります。
「運送収入」を見ると、「影響なし・増加」と答えた事業者は6月には14%、7月は13%にとどまり、多くの事業所で収益が減少(見込みを含む)していたことが明らかとなりました。


画像:国土交通省「新型コロナウイルス感染症による関係業界への影響について

「標準的な運賃」は、荷主にとっては事実上の「値上げ」となる場合が多いため、輸配送業者が荷主とスムーズな交渉を行うためには、経済・業績・状況の回復が欠かせません。今後の景気の見通しはどのようになっているのでしょうか。

帝国データバンクが毎月公表している「TDB 景気動向調査」(2020年7月3日公表)で6月の調査結果を見ると、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う緊急事態宣言が解除され、徐々に経済活動が再開されたことで国内景気の急落傾向は止まったものの、調査を行っている業界のうち、製造業などで荷動きが停滞した影響を受けた「運輸・倉庫」のみ悪化との結果が出ています。
一刻も早い景気の回復が待たれますが、下半期の見通しは新型コロナウイルス感染症の第2波・第3波への懸念から再び停滞する可能性があり、荷主・輸配送事業者双方にとって厳しい経営環境が続くとみられています。


画像:帝国データバンク「TDB 景気動向調査(全国)-2020年6月調査-

輸配送事業者にとって念願が叶ったはずの「標準的な運賃の告示制度」ですが、コロナ禍の足下では、すでに荷動きの悪化による運賃の値下がり・スポット運賃の急落に加え、一部では荷主側がより安い事業者に乗り換えをする動きが見られます。
また、今後はそれらに伴う運賃の値下げ競争、物流量の減少による過当競争が激しさを増すとの予測もあることから、これまで「ドライバーの賃金を全産業の標準的水準に是正すること」を目指し上昇傾向にあった賃金水準が再び下落する恐れもあります。

「標準的な運賃」の実現を阻む要因は社会情勢や景気動向だけではありません。
現場からは同制度に対し、「明確な上限・下限額が設定されていない」、「標準的な運賃は現実的ではない」、「告示通りの運賃は高すぎる」、「標準的運賃を元にすると支払いが難しい」、「現在の運賃が『標準的な運賃』の半額程度で現実離れしている」などの意見や疑問・不安の声が聞かれます。

先が見通せない中においても、輸配送事業者はコストに見合った対価を受け取ることができなければ事業の継続が難しくなります。しかし、荷主の業績が悪化する今、輸配送事業者側から「標準的な運賃」を交渉のテーブルに乗せることは難しく、交渉することで自社が請け負う業務の減少を招きかねないとの懸念もあるかもしれません。

一方、最近では、各地のトラック協会で、この状況に対して次のような動きも見られるようです。具体的な交渉の前に、このような関係団体や荷主企業との協力は有効かもしれません。

  • 「標準的な運賃」の告示に関する要望書を運輸局に提出
  • 総会や役員会で、「標準的な運賃」にできるだけ近づける努力をすることを議論
  • 運輸局との共催で「標準的な運賃」についての説明会を開催し、より実効性のある会議とするため取引先の荷主企業にも参加を促す
  • 県内の荷主企業や関係団体に、トラック運送の適正取引に向けて理解と協力を求める要請文を送付

このように、輸配送事業者は制度をどのように活用し交渉するかについて難しい判断を迫られていますが、経営を安定させ、社会的インフラである物流の維持・ドライバーの労働条件を改善するためには、適正な取引の実現は欠かせません。
そのひとつの指標である「標準的な運賃」の導入に向け、荷主を含めた業界全体で取り組むことが求められています。

 

3.安定的な物流維持のためにCariotができること

このように厳しい状況におかれている輸配送事業者の方々のために、Cariotでは、課題解決に導くための、的確なデータをリアルタイムで取得・分析する、さまざまな機能をご用意しています。

■作業の無駄を削減
まずは輸配送業務における作業効率を向上させる機能をご紹介します。

<ルート機能(ルートの作成)>
配送先の拠点と配送順序を登録することで、効率のよい最適なルート設計が行える機能です。エリアマップ機能で次の配達拠点への到着時刻の確認も可能です。

<ルート最適化機能(実績と最適ルートの比較)>
AIを活用したラストワンマイルの走行ルートを短時間で計算するクラウドサービスと連携し、実際の走行ルートと最適なルートを比較しながら何分の改善余地があるかを可視化します。

■時間の無駄を削減する機能
次に、予定外の対応をする必要がある場合に役立つ機能をご紹介します。

<エリア機能(現在位置の把握)>
リアルタイムで更新される位置情報から「車両が今、どこにいるのか」がひと目でわかるため、効率のよい動態管理が実現する機能です。ドライバーに電話をかけて確認しなくても現在地が確認できるため、作業工数が大幅に削減できます。

<DriveCast(関係者間での位置情報の共有)>
配送先や取引先など、社外の関係者と車両の位置情報を共有できる機能です。スマートフォンやタブレットの画面からも情報の確認ができます。また、車両の到着予測時間もひと目で確認できるため、配送先からの問い合わせ対応等の業務負担が軽減されます。

この他にも、業務効率化・生産性向上に役立つ機能をご用意しています。詳しくは、機能ページをご覧ください。

システム導入後、お客様それぞれの課題解決に向け、専任のサポート体制でお客様に寄り添いながらしっかりと伴走する「モビリティ業務最適化クラウドCariot」を、この機会にぜひ、ご活用ください。
 
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
これからもCariotは、より便利に使っていただくための機能の開発を進めてまいります。
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