コロナ禍での物流効率化に向けた既存リソース活用〜タクシー貨物輸送から異業種間の共同配送まで〜
こんにちは。Cariot(キャリオット)ブログ編集部です。
物流業界は、従来から続くドライバー不足や労働環境の改善など、複数の課題解決に向けた取り組みと同時に、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による環境の変化に対する柔軟な対応を両立することを求められています。
業界を取り巻く状況が目まぐるしく変化する中、山積している課題に対応しながら安定した物流を維持するための施策として、各車両や配送に対する規制緩和が進んでいます。
今回は、車両を活用する施策として現在、実施されている「タクシー貨物運送」、物流効率化に向けた「異業種間の共同配送」などについてお伝えします。
【目次】
1.コロナ禍の特例措置「タクシー貨物運送」が恒久化へ
2.物流効率化に向けた民間企業の取り組み
3.Cariotによる輸配送効率化の事例
1.コロナ禍の特例措置「タクシー貨物運送」が恒久化へ
2020年は新型コロナウイルス感染症拡大の影響によって、リモートワークの推進や外出自粛要請があり、宅配の小口利用件数や出前・デリバリーなど食糧品の輸送ニーズが増加しました。そのため、配送の現場では従来からの人手不足に拍車がかかり業務負担はさらに大きくなりました。
このような状況を解消ながら物流を維持する施策として、国土交通省は2020年4月、「道路運送法」(昭和26年法律第183号)第78条第3号に基づく通達を発出し、2020年9月末までの期間限定の特例措置として、許可を受けたタクシー事業者が店内で飲食の提供を自粛している飲食店から委託を受けて食糧品を運送することを許可し、運用を開始しました。
当初は時限的なものとして運用を開始した同特例措置ですが、国土交通省は、法人・個人ともに「新しい生活様式」への行動様式の変化が加速していることから「引き続きニーズが見込まれる」とし、「貨物自動車運送事業法」(平成元年法律第83号)の取り扱いを整備した上で特例措置の延長を決定しました。その結果、2020年10月1日から新制度が開始され、条件を満たしたタクシー事業者は引き続き、同法に則り有償での運送が可能になりました。現時点では取り扱い品目を「食料・飲料」に限定していますが、将来的に取扱品目がさらに拡大されるのか、今後の動向が気になるところです。
現時点で配送できる商品は限定的とはいえ「タクシー」による輸配送業務の解禁は、主にコロナ禍におけるタクシー利用者数の減少をカバーしながら、変化する物流と消費者ニーズに対応するためのものですが、過疎地域における物流の維持、物流業界で深刻さを増す人手不足を解消するための施策としても期待されます。
その反面、同特例措置が拡大解釈されることで、既存の輸配送企業・事業者の損失につながる可能性もあります。国土交通省はそのような状況を回避するため、認可したタクシー事業者の運送状況を定期的にモニタリングし、違反が発覚した場合には許可の取り消し等の措置を取るとしています。
画像:国土交通省「10月以降もタクシー事業者によるデリバリー・出前が活用できます!」
タクシーの活用以外にも、既存リソースを活用する施策として今後、国土交通省において「自家用貨物車の規制緩和」に向けた検討会が実施される予定です。
過去のCariotブログでもお伝えしましたが、現在の道路運送法では、自家用貨物車が有償で荷物を輸送することは原則禁止されており、歳暮や中元の時期など繁忙期に限り解禁されていました。
しかし、宅配の現場では、コロナ禍において宅配利用が急増したことで、事業用自動車だけでは対応できないことが予想されました。そのため、一時的ではあるものの、急激な需要拡大の対応策として2020年6月から期間限定でレンタカーでの宅配を認めるなど、これまでも宅配貨物輸送に対する規制緩和が実施されていました。
画像:国土交通省「トラック輸送情報(令和2年(2020年10月分)」
そして現在、物流の維持と効率化に向けた「自家用貨物車」の規制緩和に関して、政府の「規制改革推進会議」のワーキンググループが「自家用貨物有償運送」を検討事項として挙げています。これを受け、国土交通省は2021年1月以降に開催される同ワーキンググループで解禁に向けた協議を開始し、制度設計を進めていくとしています。
国土交通省は制度設計に際し、事業用自動車での運送を大前提に「抑制的な活用」をするとしていますが、物流効率化に向けた規制緩和策の一環として、繁忙期以外においても一定の条件を満たした場合は「自家用貨物車」活用への道が開かれる可能性があります。
次項では、物流の維持と効率化に向けた「異業種との共同配送」など民間企業の取り組みについてお伝えします。
2.物流効率化に向けた民間企業の取り組み
コロナ禍の影響を受けた物流業界は、配送量が増加した業種がある一方、海外からの輸出入が停滞したことや、外食産業・観光業・宿泊施設の営業自粛などの影響により、幅広い業種で配送量・収益共に減少に転じました。
今後、各企業・事業所が環境の変化に対応しながら収益を確保するためには、適正な荷量が確保できないことによる非効率な輸送、チャーター便の利用により増加する物流コスト、高騰する燃料費などといった複合的な課題に取り組む必要があります。
物流を取り巻くさまざまな課題を解消するための取り組みのひとつとして、鉄道・船舶などを利用した「共同配送」や、公共交通機関による「貨客混載」、配送のマッチングサービスなど、既存リソースの活用が進んでいます。
画像:国土交通省「物流政策の主な取組について」
過去のCariotブログでもお伝えしましたが、「共同配送」のメリットは、配送効率・積載率・生産性の向上やコスト削減だけでなく、ドライバーの長時間労働の原因とされる「荷積み・荷下ろし時間の長さ」が解消されることによる労働環境の改善効果などが見込まれることにあります。
「共同配送」はこれまで、食品メーカー同士など複数の同業他社がひとつのコンテナや鉄道を利用し、商品の輸送を行っていました。しかし現在では、異業種の企業同士の連携や、自社の物流・生産体制を再構築することで分散型の流通へと転換することで配送コストの削減と生産性の向上を目指す企業も現れています。
ここからは、実際に民間企業で行われている取り組みについてご紹介します。
<異業種間の共同配送:工作機器メーカーの取り組み>
同社は、物流コスト削減や環境負荷低減につなげるため、地元の空調機器メーカーとの共同配送に乗り出しました。
この取り組みには、近年、輸送業者が路線便で重量物の輸送を受け付けない傾向によって、チャーター便の利用が増加したことで上昇した物流コストを抑えたいという背景がありました。また、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、自社だけの物流量では輸送事業者への適正な発注量を確保できないことも理由のひとつです。
これらの問題を解消するため、同社は自社の工作機械部品などの重量物を運送する際、異業種を含めた共同配送への取り組みに乗り出し、2020年度末の本格展開に向けたトライアルを開始しています。これにより、非効率なチャーター便を削減し、利益率や経営効率向上につなげたいとしています。また今後は、サービス品目の輸送においても同様の取り組みを拡大する意向です。
<物流体制の再構築で生産性向上:大手飲料メーカーの取り組み>
2020年の事業方針のひとつとして「事業基盤の強化」を掲げる同社は、「持続可能な物流体制の再構築-運びやすい生産体制編の進化、『門前倉庫(納品先のお客様近くに倉庫を構えること)』の取り組みのさらなる推進」の一環として、長距離輸送とトラック台数の削減への取り組みを進めています。
具体的には、これまで工場周辺に構えていた物流拠点を消費地に近いエリアに設置し、在庫集中型から分散型の物流体制への移行を進めることで、配送距離とドライバーの拘束時間短縮につなげています。
また、拠点を再整備すると同時に生産体制の見直しを進めることで、全国で数ブロックに分割している需要管理においてブロック内の生産比率を高め、輸送距離の短縮とブロック間の相互共有網を目指しています。
同社は上記の改善策に加え、配送される商品情報をデータ化し、事前に納品先に送ることで検品レスも実施し、物流の現場で問題となっているドライバーが納品時に行う検品等の業務負担を改善する取り組みも行っています。
自社の課題を解決しながら生産性や利益率を向上させるためには、業務システムをデジタルへと転換し、現場の動きを正確な数値として捉えることができる環境を整備することが必要です。
デジタル化のメリットは、正確なデータをリアルタイムで取得・蓄積できることにあります。これにより、具体的なデータを元に業務内のムリ・ムダの洗い出しや、状況の分析、具体的な改善策を検討できるようになります。
また、自社内だけでなく取引先など社外の関係者とスムーズなコミュニケーションを取ることができる体制を構築することも大切です。双方が共通のシステムを利用することで、問い合わせの電話対応など、これまで時間を割いてきた業務を減らすことができるため、さらなる業務効率化が実現します。
新規のシステム導入や既存システムを刷新する場合は、一時的にコストが増加することも考えられますが、国による「総合物流施策大綱」においても物流システムのデジタル化が推進されており、補助金や税制優遇策などの支援策が用意されています。
社会情勢の変動が大きく大変な時期ではありますが、将来を見据えた事業基盤の強化に向け、この機会にシステムのIT化・デジタル化を進めてみてはいかがでしょうか。
※「次期総合物流施策大綱」については、過去のCariotブログをご覧ください。
※補助金等に関しては、国土交通省のHPなどで最新の情報をご確認ください。
次項では、モビリティ業務最適化クラウドCariotを導入していただき、輸配送の効率化を実現した事例をご紹介します。
3.Cariotによる輸配送効率化の事例
ここからは、モビリティ業務最適化クラウドCariotを導入し、輸配送業務の効率化を進めている導入事例をご紹介します。
■業務効率化を約20%実現:UCCコーヒープロフェッショナル株式会社
【事例ページ】https://www.cariot.jp/case/case20/
UCCコーヒープロフェッショナル様は、UCCグループの業務用サービスにおいて中核を担っている業務用食品卸企業です。
Cariotの導入により、それまで感覚的に把握していた各支店の配送ルートが可視化されたことで課題の特性が浮き彫りになり、具体的なデータを元に拠点単位での課題や問題点の抽出を進めています。
また、ドライバーごとの運転状況をモニタリングし、実際の走行ルートの把握や重複しているルートの洗い出しなどを行ったことで、配送効率を約20%改善できる見込みです。
配送業務を「見える化」することで、業務効率を改善すると同時に人員削減・配送の効率化にも取り組みながら全社的な物流コスト削減を進めています。また、既存の営業システムとCariotの連携を視野に今後、さらなる業務効率化と営業担当の業務負荷を軽減しながら、顧客満足度の向上の実現を目指すとしています。
■輸送状況の「見える化」物流効率化に成功:株式会社ゼロ/株式会社ゼロ・プラス西日本
【事例ページ】https://www.cariot.jp/case/case19/
株式会社ゼロ様は、車両輸送事業を主幹事業とする企業です。全国を網羅する物流拠点から車やバイク、特殊架装車両などの運搬を行ってます。
同社では、Cariotの車載デバイスを装備した社有車から取得したドライバーごとの動きや車両全体のデータをCariotの「ダッシュボード機能」に集約・可視化したことで、業務効率化に向けた分析にご活用いただいています。その結果、Cariot導入前の課題として挙げていた「安全性の担保」と、「業務効率化」が6〜7割改善できたと感じていただきました。
お客様の車を輸送ドライバーが自ら運転して納車する場合は、Cariotの車載デバイスを差し込むことができません。そのため、Cariotのモバイルアプリを活用し車両の状況をリアルタイムで把握しています。このようなデバイスが利用できない条件下でも、車両の位置情報や輸送ステータスを把握できる体制を整えたことで、配車スケジュールを柔軟に変更できるようになりました。
今後は、データの分析と活用を進め、グループ全体の物流効率化と売上の最大化を目指します。
CariotのWebサイトでは、上記の2社以外の導入事例もご紹介しています。
車両用途、車両情報、導入規模で絞り込み検索ができますので、ぜひご覧ください。
【導入事例】
https://www.cariot.jp/case/
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