物流業界の抱える課題と求められるDX|実行が進まない障壁も解説

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こんにちは。Cariot(キャリオット)ブログ編集部です。

激変するビジネス環境に対応すべく、国が進めているデジタルトランスフォーメーション(以下、「DX」)。具体的に何を意味するのか、物流業界の抱える課題に対してどのように役立つのか、イメージができないという方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、物流業界の抱える課題と求められるDXの形、さらに、実行が進まない理由とその対策についても解説します。

【目次】
1.デジタルトランスフォーメーション(DX)とは
2.物流業界の現状
3.物流業界の抱える課題
 3-1.配送のスピード化
 3-2.小口配送の急増
 3-3.小口配送増加による物流の複雑化
 3-4.従業員不足
 3-5.従業員の過酷な労働環境
4.物流業界の課題解決に求められるDX
5.物流業界のDX実行実例
6.物流業界でDXの推進が進まない課題
 6-1.会社の上層部と現場との意識の違い
 6-2.IT/デジタル分野の人材不足
 6-3.DX戦略を描ける人がいない
7.物流業界におけるDXを学ぶことの重要性
8.まとめ

 

1.デジタルトランスフォーメーション(DX)とは

DXとは、多くの場合、「ITを活用して、製品やサービス、ビジネスモデルや組織を変革すること」を指します。一般的には、ビジネス分野で使われることが多い言葉です。経済産業省が2018年に発表した「デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するためのガイドライン」では、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」とする定義がなされています。なお、DXの国内市場規模(投資金額)は、2019年度に7912億円に達し、2030年には3兆425億円に達すると予測されています(※1)。

※1 株式会社富士キメラ総研 プレスリリース「『2020 デジタルトランスフォーメーション市場の将来展望』まとまる(2020/10/23発表 第20112号)

 

2.物流業界の現状

物流17業種(※2)総市場規模を見ると、2013年度は19兆7800億円で、2018年度には22兆6135億円の見込みとなっています。多少の上下はあるものの、右肩上がりの順調な推移です(※3)。これは、サービスの充実、価格競争による利用しやすい価格の実現、取引先の拡充・多様化などの結果であるといえるでしょう。ただし、物流業界は1990年施行の物流二法や2003年の貨物自動車運送業法改正などの影響で、新規参入業者の増加や規制緩和が進んだことで、「参入障壁が比較的低い」という特徴があり、これが競争の激化を生む一因にもなっています。

※2 物流17業種とは
本調査における「物流17業種」とは、海運事業、システム物流事業、宅配便事業(国内)、特別積合せ運送事業、普通倉庫事業、フォワーディング事業、一般港湾運送事業、冷蔵倉庫事業、引越事業、航空貨物輸送事業、鉄道利用運送事業、軽貨物輸送事業、国際宅配便事業、鉄道貨物輸送事業、トランクルームおよび周辺事業、バイク便輸送事業、納品代行事業を対象。

※3 矢野経済研究所 プレスリリース「物流17業種に関する調査を実施(2019年)(2019/07/11発表 No.2167)

 

3.物流業界の抱える課題

現在、物流業界は主に以下5つの課題を抱えています。

  • 配送のスピード化(即日配送など)
  • 小口配送の急増
  • 小口配送増加による物流の複雑化
  • 従業員不足
  • 従業員の過酷な労働環境

3-1.配送のスピード化

他社との差別化を図るために、配送スピードの競争が発生し、更に、社会もよりスピーディな発送を求めることで、競争が激化しています。そのため、より効率的な倉庫システムの構築や、配送におけるルートの最適化が求められています。

3-2.小口配送の急増

ネットショッピング利用は、BtoBの大口配送から、BtoCの小口配送の急増をもたらしました。物流件数で見ると、1990年度は1365万6千件であったのに対して、2015年度は2260万8千件まで増大しています(※4)。小口発送の急増は、従業員への負担増、更に、管理コストや負担の増大にもつながっていると考えられます。

※4 国土交通省「物流を取り巻く現状」より。3日間調査数

3-3.小口配送増加による物流の複雑化

小口発送の急増は、物流件数の増加とそれに伴う複雑化をもたらしました。各社共にITの導入で対応しているものの、小口配送ではより細やかな配慮と管理、更に、詳細な配送ルートプランニングを要するため、高度な業務効率化が求められているのが現状です。

3-4.従業員不足

国土交通省の「物流を取り巻く現状」によると、物流に欠かせないトラックドライバーは、2013年には46%の企業が「不足もしくはやや不足」と回答していたのに対し、2018年には約70%の企業にまで増加しています(※4)。少子高齢化を背景とした労働力の減少は、物流業界も例外ではありません。実際にトラックドライバーの年代は40〜50代が中心で、現状若年層が集まりにくい課題があり、今後の更なる人手不足も懸念されています。

※4 国土交通省「物流を取り巻く現状

3-5.従業員の過酷な労働環境

すでにご紹介した、配送のスピード化、小口配送の急増、それに伴う物流の複雑化、従業員不足などにより、物流従事者の労働環境は、過酷となっている実態があります。これはドライバーのみならず、運行管理者や事務担当者にも同じことがいえます。実際に運輸業では、人材確保における不安感が強いものとなっており、離職の引き留めや人員確保の対策が必要です。

 

4.物流業界の課題解決に求められるDX

物流業界が抱える課題を解決する上で、以下のような具体的なDXの取り組みが有効であると考えられます。

  • 効率的な倉庫システムの構築
    従来の倉庫管理は、同じ納品先でも、それぞれ別の倉庫から別のトラックで荷物運搬するなど、非効率的な業務が目立っていました。効率的な倉庫システムの構築の実現は、運送業務の基礎となります。
  • 商品管理のデジタル化
    商品管理のデジタル化は、業務の円滑化・スピード化に不可欠です。今後AIの導入も進めば、在庫と発送、需要予測を含め、更に効率的な商品管理が期待できます。
  • 労働環境改善に向けた勤務状況の最適化
    勤務状況の「見える化」は、労働環境改善を目指す上で欠かせません。DXの導入は、勤務における無駄を見つけることにも役立ちます。さらに、データを通じて、従業員の客観的で公正な評価にもつながるなど、労働環境改善に大きく寄与します。
  • RPAを導入し単純作業を自動化しコスト削減
    業務の自動化を通じた効率化を意味する「RPA」(Robotic Process Automation)も、DXの領域です。単純作業を自動化することで、コストを削減するとともに、人手不足解消の一助ともなります。
  • 顧客情報の蓄積と分析による配達リスクの低減
    個人利用者全体の取扱個数のうち約2割が再配達との指数が出ています。また、この約2割にのぼる再配達を労働力に換算すると、年間約9万人のドライバーの労働力に相当します(※5)。顧客情報の蓄積と分析は、再配達問題を減らすことにも役立ちます。例えば、顧客が在宅する可能性が高い時間帯を予測することで、再配達による従業員の手間の増大や、時間のロスを低減することが期待できます。

    ※5 国土交通省「宅配便の再配達削減にむけて

  • 動態管理システムを活用した配送ルートの最適化による業務効率の向上
    動態管理システムを導入することで、実際の配送ルートやドライバー間でのエリアの重複などの無駄を把握し、改善につなげることが可能です。またAIを活用したルート最適化機能を使用し、取得した実績ルートから最適なルートを導くことができる動態管理システムもあります。

 

5.物流業界のDX実行実例

私たち「Cariot(キャリオット)」は、多くの企業様のDXパートナーとして、業務効率化を推進しています。ここでは、輸送車両部品商社F社様のDX実行事例をご紹介します。

着手前の課題
「F社」様では、販売店からの発注に対して、車両パーツの配送業務を実施。この業務特徴から、多い時には1日50件以上の配送状況の問い合わせがあり、業務増大にもつながっていました。

実施したDXの内容
課題の解決には、「車両・荷物の位置情報と、到着時間のリアルタイムな把握が必要」だと考え、動態管理システム「Cariot」を導入しました。

DX実行による成果
地図上で、車両位置と到着予測時間が確認できる「DriveCast」機能を利用し、車両の位置情報を共有したことで、配送状況の問い合わせが0件となりました。

今後の展開
今後は、 「Cariot」の「配送計画」「ルート最適化機能」機能などを活用することで、滞在の無駄が発生しない発送、ルート重複のない走行の実現を目指します。

この事例をもっと詳しく知りたいという方は、ぜひこちらの記事をご覧ください。
【Cariot活用事例】無駄な滞在時間の削減による輸配送効率化】

 

6.物流業界でDXの推進が進まない課題

経済産業省が推進するDXですが、物流業界に限らず、なかなか実行に移せない企業は少なくありません。そこには、以下の3つの課題・障壁が存在します。

  1. 会社の上層部と現場との意識の違い
  2. IT/デジタル分野の人材不足
  3. DX戦略を描ける人がいない

6-1.会社の上層部と現場との意識の違い

現場で多くの従業員がDX導入の必要性を感じていたとしても、決定権のある上層部があまり危機感を持っていないケースもあることでしょう。逆に、DX導入によって従業員の負担が増す場合、上層部の意向に対して現場から反対の声が出る可能性もあります。DXの導入には、その必要性を共有し、社内一丸となって取り組むことが不可欠です。社内でコンセンサスが取れていない場合、意識の違いがDX推進への障壁となる恐れがあります。

6-2.IT/デジタル分野の人材不足

老朽化したシステムは、運用・保守できる人材の「リタイア」というリスクを抱えています。その後継者を見つけることは、なかなか容易なことではありません。また、人材が見つかったとしても、老朽化したシステムの運用・保守に貴重なリソースを割くことは、得策ではないでしょう。そこでDX導入が求められますが、そのためにはIT/デジタル分野の知識を持つ人材の確保が不可欠です。最適な人材が社内にいない場合は、早い段階から社内育成や採用、信頼できる外部業者の確保等を実施しなければ、スムーズなDX推進は難しいでしょう。

6-3.DX戦略を描ける人がいない

適切なDX戦略を描くためには、業界に対する深い知識と理解に基づいた、包括的なアプローチが必要です。具体的には、「現時点で自社やその既存システムが抱える問題は何か」「どのような課題の解決を目指してDX導入するか」などを明確化し、事業戦略の一環として、DX導入を主導する人材が必要となります。仮にIT/デジタル分野の知識を持つ人材が社内にいたとしても、包括的な戦略ビジョンが描ける人材がいない場合は、DX推進が進まない可能性があります。

 

7.物流業界におけるDXを学ぶことの重要性

現在の物流業界は、大きな変化にさらされており、解決すべき喫緊の課題を抱えている状態です。ただし、抱える課題の大きさや種類は、企業によって異なります。そこで必要となるのが、DX担当者が「DXに関する深い知識と理解」を身に付けることです。

私たち「Cariot」は、多くの企業様のDX推進をサポートしています。動態管理システムのご提供や、セミナーの開催を通じて、私たちが蓄積した多くの情報・ノウハウをご提供していますので、どうぞご覧ください。

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8.まとめ

DXは、激変するビジネス環境に対応するための解決策として、有効な手段です。ただし、DX導入には、社内全体でその必要性を認識し、一丸となって取り組む必要があります。そのためには、まず、DX担当者の知識と理解を深めることが不可欠です。物流業界は過渡期であり、課題も多いのが現状です。だからこそ、DX導入によるインパクトは大きく、取り組むべき価値のある変革であるといえます。ぜひ、積極的なDX導入・推進をご検討ください。
 
 
※本記事の情報、及び画像は、記事作成時点のものです。詳しくは最新の情報をご確認ください。

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