働きやすい労働環境のために 〜現状の課題と国の施策〜

管理業務のデジタル化で実現する効率的な労務管理とドライバーの労働環境の改善

「働き方改革関連法」による2024年度からドライバーの時間外労働の上限規制をはじめ、ドライバーの長時間労働改善への取り組みは急務となっています。
動態管理システムを活用した労務管理と業務効率化のポイントを解説します。

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こんにちは。Cariot(キャリオット)ブログ編集部です。

人手不足が続く物流業界では、人材確保と労働環境の改善は喫緊の課題です。
この課題を解決するために、関連省庁による法改正やサポートなどさまざまな施策が講じられ、各企業・事業所においても労働環境改善に向けた取り組みが行われています。

今回は、誰もが働きやすい職場環境の整備に向けた現状と課題、それらを実現するために国が行なっている施策についてお伝えします。

 

1.誰もが働きやすい職場の実現に必要なこと

1-1.ドライバーの長時間労働を見直すために

物流業界では人手不足が続いており、このままでは、社会・経済を支える重要なインフラでもある物流の維持が難しくなる懸念が拭えません。そのため、関連省庁は法改正の他、さまざまな施策や支援策を講じています。

その施策のひとつに、誰もが働きやすい職場環境の実現に向けた「ホワイト物流推進運動」があります。
「ホワイト物流推進運動」とは、荷主側企業を含めた物流に関わるすべての関係者が連携し、物流効率化・生産性向上の実現と、年齢・性別を問わず、誰もが働きやすい職場環境を実現することを目的に実施されている運動です。
Cariotを運営する株式会社フレクトも、自主行動宣言を提出しています。

しかし、現在も人手不足が解消されたとはいえない状況が続いています。
その原因は、ドライバーは他業種に比べ拘束時間が長く年間所得額が低いなど、労働環境の厳しさにあるといわれています。そのため、法令に従い長時間労働を改善し、賃金を全産業並みに引き上げるためにも必要な「適正な運賃の収受」を実現することが重要です。

画像:トラック運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト

ドライバーの長時間労働削減に向け、中小企業を含めた国内企業に対し「働き方改革関連法」が2020年4月に施行されています(大企業は2019年4月施行)。
同法の施行により、2024年4月以降、ドライバーの時間外労働が規制され、年間の上限が960時間までとなることから、各企業・事業所では、労働実態の把握・改善策の検討が行われるなどしています。

画像:厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説

ドライバーの長時間労働を改善するためには、「契約で明確にない付帯業務の軽減」、「荷待ち時間の短縮」など、業務の見直しも必要です。
前述の見直しを行う際は、運送業者やドライバーだけでは解決が難しく、荷主側との交渉・協議をしながら改革を進めなければならないこともあるため、スムーズに改善できないことも予想されます。
しかし、荷主側の協力が得られなかったり、業務改善を行わなかったりした場合、ドライバーの拘束時間は短縮されるものの業務量は削減できず、一人当たりの担当業務が増加する恐れがあるため、早急な対応が求められます。

1-2.「過重労働解消キャンペーン」の重点監督の実施結果

ドライバーの労働環境改善に向けた施策は実施されていますが、実際の労働実態はどのようになっているのでしょうか。

厚生労働省が毎年11月に実施し、2021年5月7日に公表した「過重労働解消キャンペーン」の重点監督の実施結果によると、監督指導を行なった運輸交通業405事業所の内、70.9%で労働基準法関連の違反が認められました。この結果から、依然としてドライバーの労働環境が改善されていないケースが多いことがうかがえます。

画像:厚生労働省「過重労働解消キャンペーンの重点監督の実施結果を公表

1-3.長時間労働の削減事例と改善のポイント

ドライバーの長時間労働が是正されないケースがある中、時間外労働削減に向けた取り組みを行い、成果を挙げている事例もあります。

画像:厚生労働省「過重労働解消キャンペーンの重点監督の実施結果を公表

上記の成功事例のポイントは、業務の一部をデジタル化し効率化を図ることに加え、荷主に対して協力を求めたことにあります。その結果、時間外労働の削減や離職率の低下を実現しました。

今後、法令に従い職場や労働環境を改善しながら生産性を向上させるためには、輸配送事業者・荷主企業の双方が課題を共有し、解決に向け協力する体制をつくることが課題解消のカギといえます。
 

2.物流効率化に向けさらなる「DX」推進へ

2-1.「社会資本整備重点計画」の基本方針

物流は、社会生活や経済を維持するために欠かせないインフラとして認識されていることから、これを安定的に維持するためのさまざまな施策が実施されています。

国土交通省は2021年5月11日、社会資本整備審議会を開催し、「インフラ分野のDX」を盛り込んだ第5次社会資本整備重点計画を公表しました(2021年5月28日に閣議決定)。

「社会資本整備重点計画」とは、社会資本整備重点計画法(平成15年法律第20号)に基づき、社会資本整備事業を重点的、効果的かつ効率的に推進するために策定する計画です。

同計画では、今後5年間で取り組む重点目標(短期目標)として、下記の6項目を設定しています。

<今後5年間の重点目標>

  1. 防災・減災が主流となる社会の実現
  2. 持続可能なインフラメンテナンス
  3. 持続可能で暮らしやすい地域社会の実現
  4. 経済の好循環を支える基盤整備
  5. インフラ分野のデジタル・トランスフォーメーション(DX)
  6. インフラ分野の脱炭素化・インフラ空間の多面的な利活用による生活の質の向上

(参考:国土交通省「第5次社会資本整備重点計画(案)

この内、物流分野に関連するものは「4.経済の好循環を支える基盤整備」および「5.インフラ分野のデジタル・トランスフォーメーション(DX)」です。

画像:国土交通省「第5次社会資本整備重点計画の概要

また、重点施策として、以下の項目も盛り込まれています。
新型コロナウイルス感染症拡大など社会環境の大きな変化の中にあっても、私たちにとって必要不可欠なサプライチェーン全体の徹底した最適化を図る項目です。

1.持続可能な物流ネットワークの構築

  • 三大都市圏等における環状道路の整備
  • 国際コンテナ戦略港湾における国際基幹航路の維持・拡大
  • 高規格道路など広域道路ネットワークによる地域・拠点の連携確保
  • トラック隊列走行の実現に向けた高速道路におけるインフラ支援の推進
  • ドライバー不足対策や物流効率化を図るため、ダブル連結トラックの幹線物流での普及促進
  • ドライバーの休憩環境の改善を図るため、SA・PA における駐車マスの整備や、駐車場予約システムなどの検討を推進。SA・PA 等を活用した中継輸送、「道の駅」を活用した休憩サービスの拡充等、高速道路外の休憩施設の活用も推進
  • 都市内の荷さばき対策の推進
  • 共同輸配送、宅配の再配達削減等による物流効率化の促進

など

2.物流におけるDX、標準化等の推進

  • 港湾関連データ連携基盤(港湾物流)の構築
  • 「ヒトを支援するAIターミナル」の実現
  • 重要物流道路における大型車の通行の円滑化
  • 特殊車両通行許可における許可迅速化の更なる取組として、デジタル化の推進による新たな制度の検討・導入を実施
  • サプライチェーン全体の機械化・デジタル化の推進
  • ICT・AI 技術を活用した渋滞対策の推進

など
(参考:国土交通省「第5次社会資本整備重点計画(案)」)

2-2.「交通政策基本計画」の基本方針

国土交通省は「第2次交通政策基本計画」も策定し、公表しました。

「交通政策基本計画」は、交通政策基本法(平成25年法律第92号)に基づき、交通に関する施策の基本的な計画として策定され、2021年5月28日に閣議決定されました。

同計画では、

  • 新型コロナウイルス感染症拡大により変化を続ける社会情勢への対応
  • MaaSやバリアフリー化の推進
  • 公共交通・物流分野のデジタル化
  • 徹底した安全・安心の確保
  • 運輸部門における脱炭素化等

上記に対し、「あらゆる施策を総動員し全力で取り組むこと」としています。

また、「総合物流施策大綱」など、その他の施策と連携・整合を図りながら、物流の維持・確保に向けた「サプライチェーン全体の徹底した最適化」に向けた「業務の自動化・デジタル化」が明記されました。

画像:経済産業省「令和7年度までの交通政策の道しるべとなる計画策定

サプライチェーン全体の徹底した最適化による物流機能の確保にむけた施策

  • 手続き書面の電子化の徹底
  • 倉庫等の物流施設や幹線輸送における自動化
  • 機械化の導入、モノ・データ・業務プロセス等物流を構成するソフト・ハードの標準化
  • リードタイムの短縮
  • 契約にない付帯業務の見直し
  • 「ホワイト物流推進運動」の推進
  • 標準的な運賃の浸透による取引環境の改善
  • 事業者間での共同配送
  • 倉庫シェアリングの推進
  • 再配達の削減などによる労働生産性の改善

など
(参考:国土交通省「第2次交通政策基本計画」)

「DX」実現への第一歩は「業務のデジタル化」です。「業務のデジタル化」をすることには、人手不足をカバーしながら生産性を向上させるなど、多くのメリットがあります。

しかし、過去のCariotブログでもお伝えしたとおり、経済産業省が2020年12月に公表した調査では、日本企業の約95%が「DX」に取り組めていない、または取り組みが遅れていることが明らかとなっています。

現在の「デジタル敗戦」とも呼ばれる状況を改善し「物流DX」をさらに前進させるため、今年度もデジタル機器の導入・活用をサポートする「IT導入補助金」が実施されています。

あらゆるサポートがある今、全社を挙げて「DX」の導入・運用を開始する時期であるといえるのではないでしょうか。

2-3.「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」の見直し

過去のCariotブログでもお伝えしましたが、ドライバーの労働時間等は「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(以下、改善基準告示)で定められています。

現在、同告示の見直しを進めている厚生労働省は2021年4月30日、「第1回自動車運転者労働時間等専門委員会トラック作業部会」を開催しました。

同作業部会の専門委員からは、ドライバーの過労死防止のための年間拘束時間の削減、荷待ち時間や付帯作業の削減など、輸配送事業者だけでは解消できない課題に懸念を示し、荷主側を巻き込んだ業務の見直しを求めるなど、多くの指摘をしています。

<トラック専門委員からの指摘>

  • 休日労働をどのように捉えるのかが、今後の見直しの争点
  • 960時間の時間外労働の枠を意識した上で、告示を「守れる制度」に見直すことが必要
  • 年拘束時間は、休日労働込みで3,300時間以下にすべき
  • 運行種別によって休息の考え方を変えてもいいのでは
  • 車両の性能も向上している。また、デジタコで1分でも超えてしまうとオーバーになるような連続運転時間の運用は見直してほしい
  • 運行実態を踏まえた柔軟な運用となるよう、海外調査の結果も考慮した丁寧な議論が必要ではないか。特に予見されない遅延として、不可抗力については十分な検討が必要

など
(参考:厚生労働省「第1回自動車運転者労働時間等専門委員会トラック作業部会/第5回専門委員会における委員のご発言について」から抜粋)

※詳細は厚生労働省のHPでご確認ください。

ドライバーの過重労働を解消するためには、荷主側企業の協力が必要不可欠です。
具体的には、契約に明確にない付帯作業の見直し・荷待ち時間の削減など業務の見直しと並行し、標準的な運賃にならった適正運賃を設定することなどが挙げられます。これらは、ドライバーの労働環境をよりよいものにするための重要なポイントです。
しかし、ドライバーが行っている付帯作業にかかる時間や、荷待ち時間を正確に把握できないことも多く、このことが課題解消を難しくする原因となっています。

この問題を解決する方法に「デジタル管理システム」や「動態管理システム」の活用があります。
システムを利用することで、実際の作業時間、待機・休憩の有無、時間外労働、走行ルートなど、現場の状況を正確に把握し、分析ができるようになります。
また、輸配送事業者は、取得したデータを必要に応じて荷主企業に提示することで、交渉がしやすくなる効果も期待できます。

見えにくい業務を「見える化」し、事業者と荷主が両輪となり労働環境の改善と業務効率化の実現をサポートするために、デジタル管理システムの導入をご検討ください。

2-4.「働きやすい職場認証制度」の活用

国土交通省の「第2次交通政策基本計画」では、働き方改革による担い手の確保のために、職場の魅力・衛生環境や労働生産性向上に取り組み、トラック運転に従事する若年層(15〜29歳)の割合を全産業の平均まで引き上げることを掲げました。

しかし、若年層の就業者は増加せず、欠員率は高止まりしたままです。このままではドライバーの高齢化が進み、物流の維持が難しくなることが懸念されています。

若年層の就業者が増加しない原因として、下記の点が考えられます。

  • 拘束時間が長い
  • 休みが取得しづらい
  • 重労働などのイメージがある

など

画像:トラック運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト

上記の課題を解消するひとつの方法として、「働きやすい職場認証制度」があります。

同制度は、国土交通省が委託し、一般財団法人日本海事協会が実施しているもので、労働環境改善に向けた事業者の取り組みを社外に向け「見える化」することで、トラックドライバーに対するイメージの刷新を図り、求職者の就業を促すことを目的としています。

同協会は2021年5月20日、初の認証事業者として2,548社が認証を取得したことを公表しました。
また、同認証制度の今年度の申請受付期間は7月21日~9月21日の2か月間、認証事業者の公表は来年2月21日であることも併せて発表されました。
現在、「一つ星」のみが認証されていますが、今後「二つ星」、「三つ星」の認証を含め、制度の拡充が検討されています。

同制度を活用し、求職者に対し自社の魅力をアピールしてみてはいかがでしょうか。

 

3.働きやすい職場環境のために

「働きやすい職場環境」を実現するためには、輸配送事業者と荷主側企業の双方が課題と情報を共有し、改善策を実施することが大切です。
ここで課題となることは、どのような方法で社内外の関係者と正確な情報共有を行い、あらゆる情報を正確に把握するかということです。このような課題は、デジタル管理システムを導入することで解決できる可能性があります。

現在、さまざまなデジタル管理システムがあります。自社の課題に合わせ何を導入し、どのような機能を使い課題を解決するかのイメージが掴みにくいこともあるかもしれません。

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Cariotでは、これまで数多くのお客様の課題を、解決に向けてサポートしてきました。

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