こんにちは。Cariot（キャリオット）ブログ編集部です。

企業の車両管理にまつわる、法的責任をご存知でしょうか？
さまざまな法令がかかわるので把握するのが大変、という管理者の方もいらっしゃるのではないでしょうか？
今回は、そういった法令を整理して解説しますので、見直しや今後のご参考にしていただければ幸いです。

1.車両管理における企業の法的責任

民法第715条「使用者責任」

企業は、従業員が業務中に起こした事故に対して損害賠償責任を負う義務があります。特に、業務で使用する車両の事故は企業の管理体制が問われます。これを防ぐために、車両の点検整備やドライバーへの安全指導を徹底し、事故リスクを未然に防ぐ取り組みが求められます。

自動車損害賠償保障法3条「運行供用者責任」

車両を管理・使用する企業は、運行中に発生する事故の損害賠償責任を負います。たとえ直接運転していなくても、車両の運行に関与する企業には責任が伴います。そのため、保険への適切な加入や、車両状態の点検整備を欠かさず行う必要があります。

道路交通法第74条の3「安全運転管理者の選任」

一定台数以上の車両を保有する企業には、安全運転管理者を選任する義務があります。この管理者は、ドライバーの健康状態の把握や酒気帯び運転防止など、安全運行を支える役割を担います。選任しない場合、企業には罰則が科されることもあります。

労働安全衛生法

従業員が安全に業務を遂行できる環境を整えることは、企業の義務です。運転業務に関しては、安全運転の教育や、車両の点検整備を徹底することで、交通労働災害の発生を防ぎます。これにより、従業員の安心感と生産性の向上が期待されます。

2.車両管理に関する法令違反によるリスク

法的措置や訴訟のリスクが増大する

法令違反により事故が発生すると、被害者からの損害賠償請求や訴訟のリスクが高まります。裁判に発展すれば、企業は多額の賠償金を負担する可能性があり、経営にも大きな影響を及ぼすため、徹底した法令遵守が必要です。

罰金や罰則を受ける可能性が高まる

車両管理における法令違反が発覚した場合、企業には罰金や罰則が科される可能性があります。特に重大な違反や事故の場合、刑事責任を問われるケースもあり、企業の財務状況に大きな打撃を与えることがあります。

行政処分のリスク

法令違反が重なると、行政から事業停止命令や営業許可の取り消しなどの処分を受けるリスクがあります。これにより、企業は大規模な経済的損失や信用失墜に直結し、事業継続が困難になります。

社会的信用が損なわれイメージダウンにつながる

法令違反や事故が公になると、企業の社会的信用が著しく損なわれます。特に取引先や顧客の信頼を失うことで、ビジネスチャンスを逃す可能性が高まり、企業全体のイメージダウンにつながります。

3.法令遵守が求められる具体的な業務

運転日報の記録・管理

運転日報は、運行状況やドライバーの業務内容を正確に記録するために必要です。法令遵守の観点から、日報を適切に管理し、不備がないように保管することが重要です。これにより、トラブル発生時の証拠資料としても活用できます。

点検整備

車両の点検整備は、事故防止と法令遵守のための基本的な業務です。定期的な点検を実施し、不具合があれば迅速に修理を行うことで、車両の安全性を確保します。点検記録の保管も重要な義務の一つです。

ドライバーの教育

ドライバーに対する安全運転の教育は、法令遵守だけでなく、事故を防ぐためにも欠かせません。定期的な講習を通じて、交通ルールや企業独自の規定を周知させることで、従業員の意識向上を図ります。

アルコールチェック

アルコールチェックは、飲酒運転防止のための必須業務です。ドライバーに対して出勤時や運行前にアルコールチェックを行い、結果を記録・保管することで、法令を遵守し、安全運行を徹底できます。

4.安全運転管理者制度とは？

制度の目的

安全運転管理者制度は、一定台数以上の自動車を使用する事業所において、事業主や安全運転管理者の責任を明確にし、道路交通法令の遵守や交通事故の防止を図るため、道路交通法に定められた制度です。特定の基準を満たす企業には、安全運転管理者の選任義務が課されます。この制度は、企業の社会的責任を果たす上でも、重要な役割を担っています。

安全運転管理者の役割

安全運転管理者は、ドライバーの健康状態や運転状況を管理し、車両運行における安全体制を整備します。また、点呼や運行計画の作成、酒気帯び運転の防止などを通じて、事故の発生を未然に防ぎます。

安全運転管理者制度の重要性

この制度は、法令遵守と安全な業務運行を支える柱です。管理者が適切に職務を果たすことで、交通事故のリスクを大幅に減少させ、企業の社会的信用を守ることができます。また、従業員の安心感にもつながります。

5.安全運転管理者制度の対象となる事業者

一定台数以上の自動車を保有する事業者

事業所で一定台数以上の車両を保有する企業は、安全運転管理者を選任する義務があります。台数基準は業種や地域によって異なり、選任しない場合は法的措置を受ける可能性があります。

副安全運転管理者の選任が必要なケース

車両台数が20台以上の事業所では、副安全運転管理者の選任が必要です。これは、管理業務の負担を分担し、より徹底した安全運転管理を実現するための措置です。

6.安全運転管理者の選任と資格

安全運転管理者の選任

事業所ごとに1名以上の安全運転管理者を選任し、警察署へ届け出る必要があります。選任されることで法的責任が発生し、義務を果たさない場合、企業は罰則を受ける可能性があります。

安全運転管理者の資格

安全運転管理者として選任されるには、一定の資格要件を満たす必要があります。さらに、選任後は定期的に開催される講習を受講し、安全運転に関する知識を更新することが求められます。

7.安全運転管理者が行う9つの業務

1.ドライバーの状況把握

安全運転管理者は、ドライバーの健康状態や勤務状況を把握し、過労や体調不良がないか確認します。これにより、ドライバーが安全に業務を遂行できるようサポートし、事故リスクを減少させます。

2.長距離・夜間運転時の交代要員の配置

長時間運転や夜間の運転は疲労が蓄積しやすいため、交代要員を配置することで安全性を確保します。適切なタイミングで交代を行い、ドライバーの集中力を維持します。

3.安全運転確保のための運行計画の作成

安全運転を確保するために、無理のない運行計画を作成します。事前にルートやスケジュールを調整し、休憩や食事時間を考慮した計画を立てることで、ドライバーの負担を軽減します。

4.点呼と日常点検

運転前後に点呼を行い、車両の状態やドライバーの健康状態を確認します。また、日常点検で車両の異常がないかチェックし、必要な修理を迅速に行うことで、安全な運行を支えます。

5.異常気象時等の安全確保の措置

悪天候や異常気象時には、運行中の車両の安全確保が最優先です。ドライバーに対し、運行計画の見直しや必要な対応を指示し、無理のない運転を促します。

6.ドライバーの酒気帯びの有無を確認

運転前にアルコールチェックを行い、酒気帯び運転を防止します。酒気帯びが確認された場合は、運転を禁止し、適切な措置を取ることで、企業としての責任を全うします。

7.酒気帯びの有無の確認結果を記録・保存

アルコールチェックの結果は記録し、一定期間保存します。万が一、事故が発生した場合に証拠として使用できるよう、正確に管理しておくことが法令遵守のために重要です。

8.運転日誌の備え付けと記録

ドライバーは日々の運転状況を運転日誌に記録し、その内容は管理者に報告されます。これにより、運転時間や休憩の履歴が一目で確認でき、ドライバーの健康状態や運行状況を把握できます。

9.ドライバーに対する安全運転指導

ドライバーに対して定期的に安全運転の指導を行い、交通ルールや企業の運転規定を再確認します。また、事故発生時にはフィードバックを行い、再発防止のための教育を行います。

8.車両管理で法令遵守のために企業がとるべき対策

安全運転管理の徹底

企業は安全運転管理者を選任し、安全運転のための取り組みを徹底します。ドライバーの健康管理や酒気帯びチェックを行い、法令に基づいた安全運行を実現することが求められます。

車両管理規程を設ける

企業は車両管理に関する規程を制定し、従業員に対して車両の使用方法や点検規定、安全運転に関するルールを明確に伝えます。これにより、事故リスクを減少させ、法令遵守を確実にします。

車両管理システムを導入する

車両の状態や運行記録をデジタル化する車両管理システムを導入することで、効率的に管理できます。システムにより点検履歴や運転状況が一目で確認でき、事故防止や法令遵守が強化されます。

9.まとめ

安全運転管理者制度は、企業が法令を遵守し、交通事故を防ぐための重要な枠組みです。
安全運転管理者の選任と義務の遂行、車両管理規程の策定、システム導入により、企業はリスクを軽減し、効率的かつ安全な業務運行を実現できます。

もし、紙やエクセルなどのアナログな車両管理をされているなら、一度システムの導入をご検討されてはいかがでしょうか？

 
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